氏名:入野智久(いりのともひさ)
- 職 :准教授
- 専門 :層序学・堆積学・古気候学
- 居室 :大学院地球環境科学研究院・A棟202室
- 電話 :011-706-2226
専門について
目標
これからの未来では地球温暖化による気候変動が予測されていますが、降水量の時空分布の変動は私たちの生存に大きな影響を与えることが明らかでありながら、精密な予測は難しいもののようです。だからこそ、現在とは違った境界条件を持った世界である「過去」において、降水量分布〜もっというなら地球規模の水の分配〜が実際にどうなっていたかを調べてみたいと思うのです。境界条件が違っていたら降水量分布がどう変わるかをはっきりさせれば、未来の異なった境界条件の下での降水量分布予測の役に立つでしょう。
そこで、当研究室では上記の専門を生かして古水文循環の復元を目指しています。特に東アジアモンスーン域を含む西部北太平洋域のどこにどれだけの雨が降ったか? ということに興味を持っています。
アプローチ
古海洋学では多くの場合、海洋や湖沼の底に過去から延々と降り積もった堆積物の組成変動を解析することで、その組成変動の原因となった環境の変化を推定します。そのためには実際のところ、時間とともに成長するものならサンゴ骨格でも樹木年輪でも鍾乳石でも研究対象となります。
私の研究室では、主に西部北太平洋域の海底から採取された堆積物コアを研究対象としています。そして、その堆積物がどこから来たものでどのように堆積したのかをまず明らかにするところから始めます(堆積学的検討)。
堆積物を構成する各粒子がどこからやってきたのかを調べるために粒度・鉱物・元素組成を測定(無機地球化学的手法)するのは多くの場合有益です。私は堆積物中の各鉱物粒子が黄砂としてアジア大陸内陸部からやってきたのか、周辺の島弧域からやってきたのかを調べることで、大陸内部の気候乾燥度と極東域の降水量が過去においてどのように変動してきたのかを復元しようとしています。
私たちが扱う海洋堆積物の中には石灰質の殻をもつ有孔虫の化石が入っていることもあります。殻の炭酸カルシウムは海水中でできるので、元になった海水の組成と殻ができたときの海水温が殻に記録されると信じられています。記録は炭酸カルシウム(CaCO3)の酸素(O)の同位体比の違いに表れるため、同位体地球化学的手法は必須となります。特に元の海水(H2O)の酸素(O)の同位体比は塩分が低くなる(淡水の寄与が大きい:降水量と蒸発量のバランスで決まります)と小さくなりますので、そこからできる有孔虫殻の酸素同位体比に反映されるでしょう。そこから過去の海洋域での水収支を復元したいとも思っています。