研究概要

Feature

亀山研究室の特徴

  • 分野:化学物質循環、環境変遷
  • 対象:陸-大気-海洋の「境界」
  • 手法:野外調査・観測、高精度化学分析

私は、存在量が少ないながら地球環境に対し強い影響力を持つ微量気体成分に関する研究を行っています。近年ではその中でも雲を作る核の前駆物質の一つである反応性の高い揮発性有機化合物(volatile organic compounds, VOC)を研究対象としています。雲の形成はアルベドが増すことによって温暖化に対し負のフィードバックをもたらしますが、その影響の見積もりは極めて不確実性が高く定量的とは言えないのが現状です。VOCは光化学スモッグが発生した際にテレビなどでも取り上げられる物質ですが、それらはほとんどが人為起源のもの(排ガス中のベンゼン等)を指しています。しかしVOCには人為起源のものだけでなく自然起源のものも多く存在します。地球の表面の7割を占める海洋でも多くのVOCが生成していることが示唆されており、陸源VOCの影響がない外洋域では海洋表層で生成したVOCが現場の雲の形成を制限している可能性も指摘されています。先にも触れたとおりVOCは大気中の酸化が進行することによって雲凝結核の前駆物質であるエアロゾルを形成するため、その動態の把握は重要な課題の一つであるといえます。そこで私は海洋表層におけるVOCの大気-海洋間の収支や海洋表層水中での生成・消費プロセスの解明を試みています。我々の研究では、実際に海洋観測に参加して自ら海水試料を採取し、船上または陸の研究室に持ち帰って高精度化学分析を行うという研究手法を用いています。

Usable analytical instruments

使用可能な分析機器

P&T GC-FID(亀山所有)

  • パージ&トラップ式の溶存気体自動抽出システムとGC-FIDを組み合わせた装置
  • 海洋表層水中のイソプレン、モノテルペンをはじめとした炭化水素の濃度測定
  • ヘッドスペース抽出・導入によるメタン濃度測定

A&D-GC-FPD (亀山所有)

  • キューリーポイントインジェクター(CPI)とGC-FPD(もしくはGC-FID)を組み合わせた装置
  • 海洋表層水中の硫化ジメチル(DMS)、イソプレン等の微量気体の濃度測定
  • 冷媒を必要としない抽出・保存方法

EI-PTR-MS (国立環境研究所 谷本浩志博士所有)

  • 陽子移動反応-質量分析計(PTR-MS)と気液連続平衡器を組み合わせた装置
  • 海洋表層水中のVOC高分解能測定

P&T GC-FPD (国立極地研究所所有)

  • パージ&トラップ式の溶存気体自動抽出システムとGC-FPDを組み合わせた装置
  • 溶存の硫化ジメチル(DMS)濃度の自動測定

連続フロー型安定同位体質量分析システム (名古屋大学 大学院環境学研究科 角皆潤教授所有)

  • パージ&トラップ式の溶存気体自動抽出システムとGC-IRMSを組み合わせた装置
  • メタン・亜酸化窒素の濃度及び安定同位体の測定