COLLOQUIUM No. 649 (17:00-, 14 February 2019)

Ms. K. Shimokubo (Chair: Mr. K. Yoshida)



Distribution of picoplankton in the northeastern South China Sea with special reference to the effects of the Kuroshio intrusion and the associated mesoscale eddies. Sci. Total Environ. 589, 1−10 (2017).
J. Li1,3,4, X. Jiang1,3,4 , G. Li1,4 , Z. Jing2 , L. Zhou1,4 , Z. Ke1,4 and Y. Tan1, 4 (1LMB, SCSIO, CAS, 2LTO, SCSIO, CAS, 3UCAS, 4LAMB)

 本研究は、2016 年冬期に南シナ海北東部(SCS)の東西横断面に沿って、ピコプランクト ンの分布傾向と環境変数を調査し、黒潮の侵入とそれに伴う渦の影響を調べた。その結果、 横断面中央部で、亜表層(50−75 m)クロロフィル極大(SCM)が黒潮の侵入と中規模渦の 影響によって消滅し、より高いクロロフィル濃度に置き換わった。フローサイトメトリーと パイロシーケンシングによって、ピコプランクトンの現存量とその群集組成が複雑な物理 的過程による擾乱によって大きく影響を受けることが明らかとなった。ピコ真核生物は全 植物プランクトン生物量の大部分を占めており、それらの最大現存量(>104cells mL−1)は 低気圧性渦の影響を受けた海域(測点 11、12)でみられた。一方で、Prochlorococcus の現 存量はこれらの海域で最も少なかった。Prochlorococcus は黒潮の影響を受けた海域でより 高い現存量を示したが、Synechococcus の大部分は光のある上層に分布し、その最大現存量 は低気圧性の渦の中心に隣接する表層水(0−30 m)でみられた。従属栄養細菌(HBA)は、 植物プランクトンの全生物量の分布と一致して、横断面に沿って高い現存量を示した。系統 発生解析により、ProteobacteriaCyanobacteriaActinobacteriaBacteroidetes、及び SAR406に属する 26 のバクテリアの系統の存在が明らかになった。特に、低気圧性渦の中心の表層 水には RhodobacteralesFlavobacterialesAlteromonadales、および Vibrionales が比較的多く分布し、植物プランクトン(主にピコ真核生物)ブルームと関係していた。本研究は、北東部 SCS において、微生物生態および植物プランクトンとバクテリア間の潜在的な関連性に 黒潮の侵入が与える影響を強調するものである。

COLLOQUIUM No. 648 (17:00-, 31 January 2019)

Mr. K. Fujita (Chair: Dr. B. Li)



Widespread Anthropogenic Nitrogen in Northwestern Pacific Ocean Sediment. Environ. Sci. Technol., 51, 6044–6052 (2017).
H. Kim1, K. Lee2, D. Lim2, S. Nam3, T. Kim4, J. T. Yang1, Y. H. Ko1, K. Shin5 and E. Lee6 (1DESE, Pohang University of Science and Technology, 2SSRI, Korea Institute of Ocean Science and Technology, 3ARC, Korea Polar Research Institute, 4Department of Marine Science, Incheon National University, 5Department of Marine Sciences and Convergent Technology, Hanyang University, 6Ocean Research Division, Korea Hydrographic and Oceanographic Agency)

 中国大陸に隣接している東シナ海と黄海から得られた堆積物試料の δ15N は比較的低い値を示した(δ15N = [15N:14Nsample/15N:14Nair –1] × 1000‰として表す。つまり堆積物中の 15N:14Nと大気中の窒素の 15N:14N との比)。一方で、中国から最も遠いサンプリング地点である北極域のチュクチ海から得られた堆積物の δ15N は比較的高い値を示した(東シナ海と黄海の堆積物の値より 2〜3‰高い)。試料を採取した地点が中国から遠くなるほど、堆積物の δ15N値は大きくなることがわかった。このことは、化石燃料の燃焼や肥料の利用による人為起源窒素(NANTH)の影響が中国から遠くなるほど減少することとつじつまが合う。本研究では、いくつかの過程の中でも NANTHの流入が、中国の縁辺海域における堆積物の δ15N 値を変化させる新たな駆動源として台頭してきていると結論づけた。本研究の結果は、NANTHの影響は水柱から深層の堆積環境まで広がっていることを示しており、これはおそらく生物による消化とその後の沈積によるものだ。さらに、これまで硝酸が豊富な深層水からの硝酸フラックスが太平洋のこの海域における生物輸送生産を駆動させてきたが、本研究の結果はそれをNANTHが取って代わりつつあることを示唆している。

COLLOQUIUM No. 647 (17:00-, 10 January 2019)

Mr. X. Pan (Chair: Dr. B. Li)



Potential use of the N2/Ar ratio as a constraint on the oceanic fixed nitrogen loss, Global Biogeochem. Cycles, 30, 576–594 (2016).
M. Shigemitsu1,2, N. Gruber3, A. Oka4 and Y. Yamanaka1 ( 1EES, Hokkaido University, 2Global Chemical and Physical Oceanography Group, RCGC, JAMSTEC, 3Environmental Physics Group, Institute of Biogeochemistry and Pollutant Dynamics, ETH Zurich, 4AORI, The University of Tokyo)

 全球海洋生物地球化学モデルを用い、本研究は海洋窒素固定と脱窒(i.e.生物利用可能な窒素を海洋へ追加または海洋から除去する主な生物学的なプロセス)のトレーサとして の N2/Ar 過飽和比(ΔN2/Ar)の適用性を研究した。一連の階乗シミュレーションの中で、 酸素極小帯(OMZs)から離れた海域では、ΔN2/Ar の特徴は主に深海で起きている底生 脱窒によって決められており、より浅い海域での底生および水柱脱窒からの寄与がわずか しかないということが明らかになった。OMZs の中で、亜表層のΔN2/Ar 最大値は主に水 柱脱窒によって決定される。それに対し、大気-海洋交換による N2過飽和度の急速な減 少のため、窒素固定はΔN2/Ar にほとんど影響を与えない。従って、本研究はΔN2/Ar が 中層から深層水域でおこる水柱および底生脱窒に対して強力な制約として作用すること ができるが、窒素固定を見積もるために使うことができないと結論した。現在のところ非 常に限られたΔN2/Arの観測と本研究のモデル結果との比較は許容できるレベルの一致を 示している。それによって、モデルからの底生および水柱脱窒の規定速度と分布(それぞれ 140 と 52 Tg N yr-1)は合理的であり、他の制約から導き出された結果を確かめた。

COLLOQUIUM No. 646 (17:00-, 10 January 2019)

Mr. Z. Chen (Chair: Dr. B. Li)



Tracing denitrification in the Canada Basin: N2 loss to the atmosphere on the Chukchi Shelf and benthic inputs in deep waters. Deep-Sea Res. Part I, in press. https://doi.org/10.1016/j.dsr.2018.11.003
J. L. Reeve1,2, R. C Hamme1, W. J Williams3 (1School of Earth and Ocean Sciences, University of Victoria, 2Department of Geological Sciences, University of Colorado, 3Fisheries and Oceans Canada, Institute of Ocean Sciences)

 全球海洋の固定窒素収支は海洋の一次生産を強く支配している。北極はこの収支の除去源において不均衡に大きな役割を果たす。 本論文は、脱窒のトレーサー、N2/Ar(溶存ガストレーサー)と N*(栄養比トレーサー)2 つを用いて、カナダ海盆への窒素循環の影響を 定量化することを目指している。チュクチ海で形成している太平洋冬の水(PWW)の中では、N2/Ar と N*の間の不一致が観測されている。ここで、N*観測から予想された過剰 N2は、 測定した N2過剰量よりはるかに大きい。チュクチ棚の換気による大気への N2の損失は、この不均衡を説明する可能性が高いことが示され、単独の水塊のみにおいて脱窒トレーサー として N2/Ar を用いることの重要性を強調している。さらに、カナダ海盆の古い深層水での N2/Ar の増加と N*の減少が観察された。このことは、この水塊の 500 年の間にわたって深層 堆積物の中で底生の脱窒が行われていることを示唆している。本研究は 1 次の垂直反応拡散モデルを用いて、0.005–0.0130 mmol N m-2 d-1の脱窒率、 または全海盆にわたって積分された 0.04-0.1 Tg N y-1 の脱窒率を見積もった。深いカナダ海盆でのより遅い再無機化速度 を則して、この脱窒率は他の深海海盆について推定された速度の約半分である。北極での これらのトレーサーの測定、特にチュクチ海での直接な測定は、この地域の N2における物理対生物プロセスの相対的重要性を制約することに役立つだろう。

COLLOQUIUM No. 645 (17:00-, 20 December 2018)

Ms. S. Shukuda (Chair: Mr. K. Yoshida)



Variability in timing and magnitude of spring bloom in the Oyashio region, the western subarctic Pacific off Hokkaido, Japan. Fish. Oceanogr. 6, 118–129 (1997).
H. Kasai1, H. Saito1, A. Yoshimori2 and S. Taguchi1,3 (1HNF, 2Department of Physics, Nagoya University, 3Faculty of Engineering, Soka University)

 春期の植物プランクトンブルームは西部太平洋亜寒帯域の季節的なイベントとしてよく 確立している。またこのブルームは、遠洋における魚類の大規模な生産に対して最も重要な 状態の一つであると考えられる。本研究では、西部太平洋亜寒帯域の北海道沖の親潮海域内 おいて、ブルームの時期と規模を調査するために、1990 年から 1992 年の間に 12 回の観測 航海を行った。これらの航海でブルームの経年変動についても同じく分析した。本研究で は、水理学的な特徴をもとに、親潮水塊と混合水塊と沿岸水塊の 3 つの水塊に分類した。春 季ブルームは、4 月の親潮水塊と沿岸水塊内で観測され、1991 年と 1992 年には 5 月まで続 いていた。しかしながら、混合水塊においてはブルームが記録されなかった。冬期に起こる 表層混合層への多量な栄養塩の供給が、親潮水塊内での大規模なブルームを引き起こす一 つの要因であるようである。4 月には、有光層内での対数変換した表層のクロロフィル a 濃 度と最大密度勾配(MDG)の間に有意な正の相関関係がみられた。これは親潮水塊と混合水 塊内では、水柱鉛直方向の安定性が春季ブルームの開始にとって重要であったことを示唆 した。1991 年のブルームは、1990 年のブルームに比べ、より広範囲で長い期間であった。 これは、年による気象状況と捕食者の数の違いが原因であることが考えられた。

COLLOQUIUM No. 644 (17:00-, 6 December 2018)

Ms. R. Nitanai (Chair: Prof. Suzuki)



Temporal variability of Trichodesmium spp. and diatom-diazotroph assemblages in the North Pacific subtropical gyre. Front. Mar. Sci., 5, 27 (2018).
A. E. White1, K. S. Watkins-Brandt1 and M. J. Church2 (1CEOAS, Oregon State University, 2FLBS, University of Montana)

 北太平洋亜熱帯循環(NPSG)のような貧栄養海域では、多様な微生物共同体による N2 固定(すなわち、ジアゾ栄養)が新生産および粒子輸出に大いに寄与することが示されてきた。 2015 年および 2016 年に、我々は、顕微鏡観察および nifH 遺伝子の定量 PCR 法を用いて、 NPSG で大型細胞サイズ(>10 µm)のジアゾ栄養属の Trichodesmium 属と珪藻に共生した Richelia 属および Calothrix spp.のおおよそ毎月の存在量を測定した。これら属に関して、 我々は、調査期間中の表層水柱(0−45 m)内における Trichodesmium の細胞濃度が 1−5,988 cell L−1の範囲にあり、Trichodesmium がより豊富に存在したことを見出した。一方、Richelia および Calothrix spp.の存在量の合計値は、4−157 heterocysts L−1の範囲であった。細胞ベースと遺伝子ベースの手法間で、絶対存在量に大きな相違が認められた(nifH copies L−1は細胞濃度よりも最大 102−103 高かった)。手法間のこれら著しい相違について、可能性のある解釈を議論した。これらの属について示された既存文献中の細胞あたりの最大窒素固定速度を用いて、我々は大型窒素固定生物群集による潜在的な N2固定速度を 0.01−1.5 nmol N L−1 d−1の間と推定した。推定した速度を利用可能な 15N2 トレーサー測定値と比較すると、我々の調査期間中の海洋表層において、大型窒素固定生物群集は、通常、全体の窒素固定にほとんど寄与しなかった(< 10%)と結論づけた。反対に、2015 年および 2016 年の秋冬に観察された高濃度の Trichodesmiumは、測定された窒素固定速度の 50%を超える活動が見積もられた。これら大型細胞サイズで不均一に分布した生物は依然として不相応に輸送に寄与するかもしれない一方、細胞存在量に基づいた速度推定は、ボトル培養で測定された N2固定速度の大部分に他の窒素固定生物が寄与することを提案している。

COLLOQUIUM No. 643 (17:00-, 29 November 2018)

Mr. I. Nakagawa (Chair: Prof. Nishioka)



Effects of an iron-light co-limitation on the elemental composition (Si, C, N) of the marine diatoms Thalassiosira oceanica and Ditylum brightwellii. Biogeosciences, 7, 657-669 (2010).
E. Bucciarelli, P. Pondaven, and G. Sarthou (Université Européenne de Bretagne, Université de Brest, Technôpole Brest Iroise)

 我々は、外洋に分布しサイズが小さい珪藻の種である Thalassiosira oceanica と沿岸に分布しサイズが大きい種である Ditylum brightwellii について、細胞内の珪素(Si)や炭素(C)、窒素(N)は、鉄(Fe)や鉄+光制限の環境でどのような効果を受けるかを調べた。その結果、強光(HL)や弱光(LL)下において、鉄制限の環境になるほど細胞に対する C と N の割合が減少することを示した。また細胞に対する Si の割合は、T. oceanica だと LL で増加するが HL では増減なく、D. brightwellii だと光の強さに関係なく減少することを発見した。過去の研究と比較すると、細胞に対する C と N の割合に関して、鉄制限の環境だと他の珪藻も似たような傾向があることを示している。したがって鉄制限を受けている珪藻における種間の Cと N の要求量の違いは、細胞容積の変動によるものと考えられる。しかしながら、細胞や細胞容積に対する Si の割合は、C や N と違い先行研究を見ても決まった傾向がない。このことは種間の違いが、鉄による細胞容積の変動よりも silicification の程度による影響を受けることを示唆している。比増殖率の変動に対する C:N, Si:C, Si:N の変動は、T. oceanicaD. brightwellii ともに光強度に関係なく同じ傾向があった。しかし鉄制限の環境におけるのC:N の変動は、先行研究で述べられている他の珪藻とは異なっている。これは種間の違いと関連づけるよりも成長条件と関連づけられるかもしれない。また他の先行研究と同様、Si:Cと Si:N は、それぞれ比増殖速度の最大値の 100%から 40%の間で 2 倍以上増加した。LL やHL のように更に制限的な環境だと、これら 2 つの比は減少することを示した。これらの結果は生物地球化学的な理解やモデリングにおいて重要になるだろう。

COLLOQUIUM No. 642 (17:00-, 29 November 2018)

Ms. D. Yan (Chair: Mr. K. Yoshida)



An integrated study of photochemical function and expression of a key photochemical gene (psbA) in photosynthetic communities of Lake Bonney (McMurdo Dry Valleys, Antarctica). FEMS Microbiol. Ecol. 89, 293-302 (2014).
W. Kong1, W. Li1, I. Romancova2, O. Prášil2 and R. Morgan-Kiss1 (1MBI, Miami University, 2Laboratory of Photosynthesis, Algatech, Institute of Microbiology ASCR)

 Lake Bonney is one of several permanently ice-covered lakes in the McMurdo Dry Valleys, Antarctica, which maintain the only year-round biological activity on the Antarctic continent. Vertically stratified populations of autotrophic microorganisms occupying the water columns are adapted to numerous extreme conditions, including very low light, hypersalinity, ultra-oligotrophy and low temperatures. In this study, we integrated molecular biology, microscopy, flow cytometry, and functional photochemical analyses of the photosynthetic communities residing in the east and west basins of dry valley Lake Bonney. Diversity and abundance of the psbA gene encoding a major protein of the photosystem II reaction center were monitored during the seasonal transition between Antarctic summer (24-h daylight) to winter (24-h darkness). Vertical trends through the photic zone in psbA abundance (DNA and mRNA) closely matched that of primary production in both lobes. Seasonal trends in psbA transcripts differed between the two lobes, with psbA expression in the west basin exhibiting a transient rise in early Fall. Last, using spectroscopic and flow cytometric analyses, we provide the first evidence that the Lake Bonney photosynthetic community is dominated by picophytoplankton that possess photosynthetic apparatus adapted to extreme shade.

COLLOQUIUM No. 641 (17:00-, 15 November 2018)

Ms. X. Yu (Chair: Ms. D. Yan)



Detecting phytoplankton diatom fraction based on the spectral shape of satellite-derived algal light absorption coefficient. Limnol. Oceanogr. 63(S1), S85–S98 (2018).
G. Zheng1,2 and P. DiGiacomo1 (1NOAA/NESDIS, STAR, 2GST)

 Knowledge about phytoplankton composition is important for biological and biogeochemical research as well as for ecological applications (e.g., water quality) in coastal and inland waters. Satellite remote sensing can potentially map the baseline patterns, anomalies, and trends of phytoplankton composition on a synoptic basis. A prominent challenge is the attribution of the total optical signal to phytoplankton amid interference from minerals and humus. Here, we obtained the phytoplankton light absorption coefficient, aph(λ), in the Chesapeake Bay by partitioning satellite-derived total light absorption coefficient of water using the generalized stacked-constraints model (GSCM). We show that the red-to-blue band ratio of GSCM-derived aph(670)/aph(440) can be associated with diatom fraction in Chesapeake Bay. Further, the spatial-temporal patterns shown in the satellite-derived diatom fraction data agree well with field studies conducted previously around this region, including low diatom dominance in summer, high diatom dominance in the lower bay in winter, diatom-dominated spring blooms in coastal waters outside of the bay, and increasing seasonal variability of diatom fraction from the upper to the lower bay. We also found that in the middle bay the summer diatom fraction correlates strongly with spring streamflow on an annual basis, which can be explained because sediment deposited by spring freshets is the main source of silicate supply during summer. These results suggest that the satellite-derived diatom fraction maps can serve as a baseline for detecting phytoplankton composition anomalies, and highlight the effectiveness of using absorption-based approach to extract phytoplankton composition information for optically complex waters.

COLLOQUIUM No. 640 (17:00-, 8 November 2018)

Mr. S. Yunoki (Chair: Dr. B. Li)



Increase of dissolved inorganic carbon and decrease in pH in near-surface waters in the Mediterranean Sea during the past two decades. Biogeosciences, 15, 5653-5662 (2018).
L. Merlivat1, J. Boutin1, D. Antoine2,3, L. Beaumont4, M. Golbol3, and V. Vellucci3 (1Sorbonne Université-CNRS-IRD-MNHN, LOCEAN, 2RSSRG, School of Earth and Planetary Sciences, Curtin University, 3Sorbonne Université-CNRS, LOV, 4DT INSU-CNRS)

 地中海北西部の表層10 m以浅における二酸化炭素の等散能(f CO2)は一時間毎に測定され、1995年から1997年、2013年から2015年の3年単位の2つのデータ群は、CARIOCAセンサーによって約20年間隔で記録されている。測定された温度および塩分に由来するアルカリ度と組み合わせることによって、pHおよび全炭酸(DIC)の変化を計算する。表層の海水中における全炭酸は~25 µmol kg-1、二酸化炭素等散能は40 µatm増加した一方で、海水のpHは0.04(0.0022 yr-1)減少した。全炭酸の増加は、大気中の二酸化炭素との平衡から予想される値より約15%大きい。これは自然変動、例えば冬の対流の頻度と強度が2つの時期の間で増加することにより生じる可能性がある。同様に、ジブラルタル海峡を通じて地中海へと人為起源炭素を供給するものとして、大西洋が寄与しているという可能性もある。我々は地中海における人為起源炭素の総量の約30%を、過去18年間蓄積された全炭酸の一部が占めると推定している。

COLLOQUIUM No. 639 (17:00-, 8 November 2018)

Ms. R. Banba (Chair: Ms. L. Evans)



Very low isotope ratio of iron in fine aerosols related to its contribution of the surface ocean. J. Geophys. Res. Atmos., 121, 119-136 (2016).
M. Kurisu1, Y. Takahashi1, T. Iizuka1 and M. Uematsu2 (1Department of Earth and Planetary Science, Graduate School of Science, University of Tokyo, 2AORI, University of Tokyo)

 粒形 7 分画したエアロロゾルを広島で採取し、化学種、可溶性鉄、鉄化学種、鉄安定同位 体比(δ56Fe)を分析した。その結果、粗大粒子は微小粒子よりも人為起源エアロゾルを多く含んでいることが示唆された。微小粒子中の鉄は粗大粒子と比較して、模擬海水により溶けやすく(最大 25 %)、フェリハイドライトやヘマタイトのような鉄(水)酸化物で形成されていた。粗大粒子の鉄安定同位体比(+0.04 ‰〜+0.30 ‰)は地殻の平均値(0.0 ‰)に近かった。一方、微小粒子の δ56Fe は−2.01 ‰から−0.56 ‰の範囲で有意に低かった。微小粒子中の可溶性鉄の δ56Fe は際立って低かった(−3.91〜−1.87 ‰)。これらの結果は、人為起源エアロゾルは低い δ56Fe を伴った可溶性鉄を生じさせることを示唆している。このような低い値は、鉄が難揮発性であるため、高温下で鉄が蒸発する場合同位体分別が起きるということで説明が可能であった。北西太平洋の海洋エアロゾルも同様に分析した。微小粒子中の δ56Fe は、広島のサンプルと同様に、粗大粒子よりも低かった。これらの結果は、鉄安定同位体比に基づいて、表層に供給される人為起源鉄の寄与を定量的に推定することの重要性を示している。

COLLOQUIUM No. 638 (17:00-, 25 October 2018)

Mr. K. Yoshida (Chair: Ms. D. Yan)



Pigment composition and photoprotection of Arctic sea ice algae during spring. Mar. Ecol. Prog. Ser., 585, 49–69 (2017).
V. Galindo1, M. Gosselin2, J. Lavaud3, C. J. Mundy1, B. Else4, J. Ehn1, M. Babin3, S. Rysgaard1,5,6 (1CEOS, Faculty of Environment, Earth and Resources, University of Manitoba, 2ISMER, Université du Québec à Rimouski, 3L’UMI TAKUVIK, Département de biologie, CNRS/Université Laval, Québec-Océan, 4Department of Geography, University of Calgary, 5ARC, Aarhus University, 6GCRC, Greenland Institute of Natural Resources

 春季初期から海氷融氷期まで、北極海氷底部に生息する海氷微細藻類は、さまざまな光強度にさらされ、その範囲は入射する可視光の<0.1%から最大 25−30%にわたる。春季の海氷微細藻類の増加は通常迅速に起こり、海氷底部の微細藻類は余剰な光から細胞自身を保護するために光保護応答(例えば、細胞内の色素組成)を変化させる。本研究は、春季に2 つの対照的な積雪深度(薄いおよび厚い積雪)を持つ海氷の底部海氷微細藻類の色素組成の時間的変動に着目した。また、比較的高照度の光に対する海氷微細藻類の光保護能力を調査するため、短期間(<6 h)の制御実験も行った。海氷微細藻類は、10−100 µmol photons m−2 s−1の光強度に対し迅速に、また有効に光保護を行った。しかしながら、海氷微細藻類の群集組成および光履歴によって、対照的な光保護応答が観測された。実験結果から、キサントフィルサイクル(ディアディノキサンチンからダイアトキサンチンへの変換)および D1 タンパク質の再循環が海氷微細藻類の光保護を安定化させていることを示唆した。加えて、海氷底部の微細藻類は、変化する光曝露への光保護応答を向上させるため“細胞内光曝露記憶”戦略を用いているようであった。この過程は、2 週間ほど維持されうる。したがって、海氷微細藻類は、変動する光環境に対して以前から考えられていたよりもより回復力があり、将来の雪と海氷被覆の変動に関連して起こりうる光環境変化にもよく適応できるかもしれない。

COLLOQUIUM No. 637 (17:00-, 18 October 2018)

Mr. S. Yunoki (Chair: Prof. Watanabe)



Multi-decadal variations in the oceanic CO2 uptake and biogeochemical parameters over the northern and southern high latitudes. Polar Sci, doi:10.1016/j.polar.2018.05.008 (2018, in press).
V. Pant1, J. Moher1 and V. Seelanki1 (1CAS, IIT Delhi)

 1850−2100年の間の大気中のCO2流束と生物地球化学的媒介変数の空間的・時間的変動性を説明するために、The Community Earth System Model with the biogeochemistry module (CESM1-BGC)がRCP8.5シナリオとともに用いられた。1850−1860年、2010−2020年、2090−2100年の10年ごとの区切りを、過去(歴史的)、現在、未来の気候における海洋の状態を表すものとした。この模型実験では、北半球(NH)と南半球(SH)高緯度海域におけるCO2流束と生物地球化学的媒介変数間の興味深い違いを示した。海洋表層の水温は両半球において1960−2100年の間、単調に増加している。高まった大気中のCO2濃度は南半球高緯度域へのCO2流束の増加につながり、海洋酸性化の拡大をもたらした。しかしながら北半球高緯度域においては、CO2流束の増加は2050年までに止まり、2080−2100年の間に減少する。この北極海の海水のCO2流束の減少は氷の融解による淡水の流入と結びつき、未来の気候において北半球高緯度域の混合層深度を減少させ、CO2吸収を低下させる。北半球高緯度域の生物生産(クロロフィル濃度)が2000−2100年の間で急速に低下する(現在よりも2.5 mg m-3低くなる)ことが明らかになった。両半球の3つの海域での、生物地球化学的媒介変数の時系列分析が半球内の違いに加えて、同じ半球内にある異なる海域間での明確な違いを明らかにした。大規模な子午面循環の変化と酸性化の高まりは、深層から表層水への栄養塩の供給の減少と北半球の海域におけるクロロフィル濃度の減少につながる。南極周極流による混合が南大洋のクロロフィル濃度の維持において重要な役割を果たしている。物理的、生物地球化学的媒介変数の数十年規模の時空間的変動について、媒介変数同士の相互依存、温暖な気候での大気―海洋間の交換における海洋の過程から議論されている。

COLLOQUIUM No. 636 (17:00-, 11 October 2018)

Mr. Z. Chen (Chair: Mr. Yoshida)



Expansion of denitrification and anoxia in the eastern tropical North Pacific from 1972 to 2012. Geophys. Res. Lett., 43, 5252–5260 (2016).
R. E. A. Horak1, W. Ruef1, B. B. Ward2 and A. H. Devol1 (1School of Oceanography, University of Washington, 2Geosciences Department, Princeton University)

 東部熱帯北太平洋(ETNP)は、広範囲の水柱での N 損失(脱窒)をともなう大規模な無酸素水域である。脱窒と酸素欠乏の長期的な傾向に若干の相違があり、無酸素領域内の水柱脱窒に関する長期間の研究は不足している。この研究では、1972 年から 2012 年にわたる同一の横断線上での 4 つの観測で得られた ETNP 水柱中の亜硝酸塩、N*、O2データを比較した。1972 年から 2012 年にかけて、無酸素水の量は増加し、低酸素状態はより浅い等密度面に拡大した。累積 N 損失の地球化学的標識は、2012 年に脱窒が最も高いことを示唆した。脱窒は上部酸素欠乏領域(ODZ)で最も増加した。2012 年の世界最大の ODZ における酸素とN 損失の変化は、太平洋十年規模振動では説明できず、流れ込んでくる海流中の酸素減少と風力によって駆動される湧昇の増加が、N 損失と無酸素水の増加に寄与する機構であるだろう。

COLLOQUIUM No. 635 (17:00-, 30 August 2018)

Mr. X. Pan (Chair: Prof. Watanabe)



A reevaluation of the magnitude and impacts of anthropogenic atmospheric nitrogen inputs on the ocean, Global Biogeochem. Cycles, 31, (2), 289–305 (2017).
T. D. Jickells1, E. Buitenhuis1, K. Altieri2, A. R. Baker1, D. Capone3, R. A. Duce4, F. Dentener5, K.Fennel6, M. Kanakidou7, J. LaRoche8, K. Lee9, P. Liss1, J. J. Middelburg10, J. K.Moore11, G. Okin12, A. Oschlies13, M. Sarin14, S. Seitzinger15, J. Sharples16, A. Singh14, P. Suntharalingam1, M.Uematsu17 and L. M. Zamora18,19 (1School of Environmental Science, UEA, 2ERC, UCT, 3Department of Biological Sciences, USC, 4Departments of Oceanography and Atmospheric Sciences, TAMU, 5DGJRC, 6Department of Oceanography, Dalhousie University, 7Department of Chemistry, University of Crete, 8Department of Biology, Dalhousie University, 9SEE, POSTECH, 10Faculty of Geosciences, University of Utrecht, 11ESS, University of California, 12Department of Geography, University of California, 13GEOMAR, 14Geosciences Division, PRL, 15Department of Environmental Studies, UVic, 16School of Environmental Sciences, University of Liverpool, 17AORI, University of Tokyo, 18GSFC, NASA, 19USRA)

 大気沈着由来の生物利用可能な窒素の海洋への流入について最新の最適化した統合見積りをここに報告する。これを河川流入と窒素固定と比較するとともに、これらのフラックスの人間活動の規模を見積もった。河川からの窒素流入は大陸棚の窒素を支配しており、この河川からの窒素の約 75%が大陸棚から大洋に流れ込むと推定した。窒素固定は、外洋域への窒素の主な外部源である。大気沈着は陸源窒素の主要な経路であり、このため、窒素循環における人為起源摂動が外洋へ到達する主要な経路となる。われわれは、現在の人為起源の流入が海洋全体の炭素隔離の増加に 0.4%程度寄与すると推定した(0.15 PgCyr-1 の取り込みに相当し、Duce et al. (2008) の推定より値が低い)。海洋 CO2の取り込みによる気候変動のこの減少分は、海洋のN2O排出量の増加によってわずかに相殺される。ここでは、大気窒素沈着による海洋生物地球化学の摂動を一層理解するため、海洋大気窒素システムにおける4つのフィードバックを明らかとする。その4つとは、(1)アンモニア循環、(2)海洋と大気の間の有機窒素循環、(3)大気沈着由来の表層窒素濃度の増加による窒素固定への抑制、(4)大気流入による海洋生産力増加のために起こる脱窒由来の窒素損失の増加である。

COLLOQUIUM No. 634 (17:00-, 30 August 2018)

Ms. X. Yu (Chair: Dr. D. Yan)



Light absorption by phytoplankton in the North Pacific Subtropical Gyre, Limnol. Oceanogr. 62, 1526-1540 (2017).
R. M. Letelier1,2, A. E. White1,2, R. R. Bidigare2, B. Barone2,3, M. J. Church2,3,4, D. M. Karl2,3 (1 CEOAS, OSU, 2Daniel K. Inouye Center for Microbial Oceanography: Research and Education, 3Department of Oceanography, UH, 4FLBS, UM)

 To constrain the energy fueling photosynthesis in the North Pacific Subtropical Gyre (NPSG) we characterize the variability of phytoplankton absorption spectra in conjunction with that of the light field at Station ALOHA (22°45’N, 158°00’W). Furthermore, we decompose the phytoplankton absorption into photosynthetic and photoprotective components based on high-performance liquid chromatography pigment analysis. Between January 2006 and December 2012 the variability in chlorophyll-specific absorption (a*Φ) above the deep chlorophyll maximum (DCM) layer was driven by changes in photoprotective carotenoid concentrations while the chlorophyll-specific absorption of photosynthetic pigments (a*Φ(PSP) ) remained nearly constant with a mean (± SD) value of 0.008± 0.001 m2 (mg chl a) -1 . In contrast, below the DCM layer changes in a*Φ resulted from increases in the relative contribution of photosynthetic pigments with depth, suggesting that the constancy in a*Φ(PSP) above the DCM layer is controlled by nutrient limitation. While the daily photon fluxes absorbed by photosynthetic pigments in the upper 45 m did not vary at a seasonal scale, averaging 0.45± 0.12 mol quanta m-2 d-1 in winter and 0.46± 0.10 mol quanta m-2 d-1 in summer, when integrated over the upper 200 m these fluxes ranged from 0.64± 0.16 to 0.79± 0.19 mol quanta m-2 d-1 in winter and summer, respectively. Based on the rate of photons trapped by the photosynthetic pigments and on the seasonal euphotic zone depth integrated gross O2 evolution rates derived from H218O in situ incubations we estimate a mean photosynthetic yield of ~0.1 mol O2 evolved per mol quanta absorbed by photosynthetic pigments.

COLLOQUIUM No. 633 (17:00-, 2 August 2018)

Ms. K. Shimokubo (Chair: Prof. Suzuki)



Nutrient limitation suppresses the temperature dependence of phytoplankton metabolic rates, ISME J., 12, 1836-1845 (2018).
E. Marañón1, M. P. Lorenzo1, P. Cermeño2 and B. Mouriño-Carballido1 (1Departamento de Ecologíay Biología Animal, Universidade de Vigo, 2ICM, CSIC)

 気候の温暖化は、個々の代謝速度の温度依存性の変化を通して、生態系機能を変える可能性がある。植物プランクトン代謝の温度感受性は、これらの微生物が海洋の食物網を支え、生物地球化学的循環における主要な駆動者であることから、特に重要である。植物プランクトンの代謝速度は栄養塩が豊富なときに温度とともに上昇するが、大部分の海域で広がる栄養塩が限られた増殖条件において、同じ様式が適用されるかどうかは不明である。ここでは、異なる窒素(N)制限のレベルでの代謝の温度依存性(活性化エネルギー、Ea)を決定するために、3 種類の汎存種で生物地球化学的に重要な種(Synechococcus sp.,Skeletonema costatum およびEmiliania huxleyi)の連続培養を用いる。 我々は、CO2 の固定速度と呼吸速度はN 供給量が増加するにつれて増えるが、温度にほとんど影響を受けないことを示す。N が制限された増殖の下での光合成のEa(0.11±0.06 eV、平均±標準誤差)および呼吸のEa(0.04±0.17 eV)は、栄養塩が十分にある条件での増殖速度のEa(0.77±0.06 eV)よりも有意に小さい。栄養塩制限下で代謝速度の温度依存性が減少したことは、最大反応速度および半飽和定数の両方が温度とともに増加するため、酵素反応速度論の観点から説明することができる。我々の結果は、温度上昇が植物プランクトンの代謝速度に及ぼす直接的で刺激的な効果が高い栄養塩利用度を持つ生態系に限定されることを提案している。

COLLOQUIUM No. 632 (17:00-, 26 July 2018)

Ms. R. Nitanai (Chair: Mr. K. Yoshida)



Diversity and activity of nitrogen-fixing communities across ocean basins, Limnol. Oceanogr., 62, 1805-1909 (2017).
M. R. Gradoville1, D. Bombar2, B. C. Crump1, R. M. Letelier1, J. P. Zehr2, A. E. White1 (1CEOAS, Oregon State University, 2Ocean Sciences Department, University of California Santa Cruz)

 窒素固定生物がいないとされてきた生息地での窒素固定速度(NFR)および従属栄養窒素固定原核生物由来のニトロゲナーゼ(nifH)遺伝子の存在に関する近年の研究は、外洋域での窒素固定が、暖かく貧栄養な表層水中のシアノバクテリアによって制限されるという今までの考え方と異なっている。ここで本研究は、シアノバクテリア様窒素固定生物が優占すると知られる海域(北太平洋亜熱帯循環, NPSG)と、従属栄養窒素固定生物が優占する二つの海域::南太平洋西部(ESP,チリの湧昇域から亜熱帯循環まで)および太平洋北西海域の沿岸湧昇系(PN)での NFR と窒素固定生物の多様性(ハイスループット nifH シーケンシングによって評価)を比較する。本研究では、3 つの地域の間で明確な生物地理学的パターンがみられた。窒素固定生物の群集構㐀は、シアノバクテリアである UCYN-A が優占する NPSG と従属栄養性 nifH グループ 1 J /1 K が優占する ESP との間で大きく異なったが、表層 NFR の大きさは類似していた(最大 5.1 nmol N L-1 d-1)。しかし、主に PNW および NPSG の中深層から得られた従属栄養性の nifH 遺伝子は、多様でありながら、これらの両方の環境で NFR は検出されなかった(しかし、グルコース添加は NPSG 深層における低速度を刺激した)。本研究は、窒素固定生物は海水中にほぼ遍在するが、この機能グループの活性は地域的に制限されていることを示唆している。さらに本研究では、15N2 を用いた窒素固定測定の検出限界が中深層で報告された多くの低 NFR(文献ではおおよそ< 0.1 nmol N L-1 d-1)は、従属栄養窒素固定の活性がほとんどないことを示唆した。このことは、従属栄養性窒素固定生物の生態系の重要性を評価することの課題を強調している。

COLLOQUIUM No. 631 (17:00-, 12 July 2018)

Mr. I. Nakagawa (Chair: Prof. Nishioka)



Insights Into the Biogeochemical Cycling of Iron, Nitrate, and Phosphate Across a 5,300 km South Pacific Zonal Section (153°E–150°W), Global Biogeochemical Cycles, 122, 32, 187-207 (2018).
M. J. Elwood1, A. R. Bowie2,3, A. Baker4, Melanie Gault-Ringold2,5, C. Hassler6, C. S. Law5,7 , W. A. Maher8, A. Marriner7, S. Nodder7, S. Sander5, C. Stevens7,9, A. Townsend10, P. Merwe2, E. M. S. Woodward11, K. Wuttig2 , and P. W. Boyd5,7,12 (1RSES, ANU, 2ACECRC, 3IMAS, University of Tasmania, 4Centre for Ocean and Atmospheric Sciences, School of Environmental Sciences, UEA, 5Department of Chemistry, University of Otago, 6DEFSE, University of Geneva, 7NIWA, 8Institute for Applied Ecology, University of Canberra, 9Department of Physics, University of Auckland, 10CSL, University of Tasmania, 11PML, 12Now at IMAS, University of Tasmania)

 鉄とリン酸、硝酸塩は植物プランクトンの成長には欠かせない栄養塩である。故に、それらの表層への供給が海洋の基礎生産を制限する。本研究では、オーストラリア大陸から貧栄養の南太平洋ジャイヤまでの GEOTRACES セクション(GP13; 30–33°S, 153°E–150°W)における、鉄とリン酸、硝酸塩の濃度を明らかにする。表層の溶存鉄濃度はオーストラリア大陸の近くでは 0.4nM を超えているが、大陸から離れた沖では 0.2nM 以下だった。大気や鉛直拡散による表層 100m 以浅への溶存鉄の供給フラックスは平均で 11±10 nmol m-2 d-1だった。オーストラリア大陸から離れた海域(170°W-150°W)では、大気由来の鉄が表層の溶存鉄プールの平均 23±17%を担っていたため、重要なソースであることがわかった。170°W150°Wの表層において、硝酸塩の平均濃度は 5±4 nmol L-1で、リン酸の平均濃度は 58±30 nmol L-1であった。表層への窒素の供給は主に深層水からのものであり、大気からの窒素供給や窒素固定は、観測域の東では全体のフラックスの 1%未満しか寄与していない。深層の N:P は平均して 14.5±0.5 であったが、deep chlorophyll maximum (DCM)より上の層では 1未満であった。このことは、植物プランクトンによる N:P 同化率が高く、硝酸塩をほぼ定量的に除去するということを示唆している。DCM やその上層のリン酸塩に対する鉄と硝酸塩の供給ストイキオメトリーが東方向に減少していることは、2 つの生物地学的プロヴィンスを生み出している。それは、ジアゾ栄養生物による生産があるかないかである。

COLLOQUIUM No. 630 (17:00-, 12 July 2018)

Ms. R. Banba (Chair: Prof. Nishioka)



Water column iron dynamics in the subarctic North Pacific Ocean and the Bering Sea. J. Geophys. Res. Oceans, 118, 1257-1271 (2013).
R. Uchida1, K. Kuma2, A. Omata1, S. Ishikawa1, N. Hioki2, H. Ueno2, Y. Isoda2, K. Sakaoka2, Y. Kamei2 and S. Takagi2 (1Graduate School of Environmental Science, Hokkaido University, 2Faculty of Fisheries, Hokkaido University)

 北太平洋亜寒帯域の北緯47度東西ライン及びベーリング海のウォーターカラム中の鉄の濃度を測定した。北太平洋の溶存鉄(D-Fe)は表層で枯渇し、1000-1500 mのmid-depthで最大となり(西部1.1-1.4 nM;東部 0.6-0.7 nM)、3500-4000m以深で深度とともに徐々に減少した(西部 1.1-1.4 nM;東部 0.6-1.1 nM)。深層でのD-Feと全可溶Fe(T-Fe)は、東に向けて減少する傾向を示した。西部深層でFe濃度が高かったのは、大気からの降下や水平輸送を通じた溶存Feの供給が西部により多いことがおそらく原因である。対照的に、ベーリング海のFe濃度は、mid-depthまでに急激に増加し、深度とともに微増していき1500m-2250mの中層において1.6-1.7 nMで最大となり、3700mで1.3 nM-1.4 nMになるまで深度とともに微減していくという特徴を持っていた。この鉛直分布の特徴は、ベーリング海の全測点で一貫してみられた。ベーリング海における高いFe濃度とD-Feの最大深度がより深いことは、生物生産がより多いことと、沈降有機物粒子の分解によるD-Feのインプットがより多く深い深度で起きることが原因である可能性が高い。ベーリング海ではD-Feと同様に、腐植様蛍光溶存有機物とPO4の濃度が高く、深いところまでインプットがあった。このことは、急な大陸斜面に沿って有機物リッチな堆積物からFeが供給されることと、ベーリング海海盆の深い水の交換が遅いことによって、分解生成物がより長く蓄積することが原因である可能性を示唆した。

COLLOQUIUM No. 629 (17:00-, 5 July 2018)

Ms. S. Shukuda (Chair: Dr. B. Li)



The observed evolution of oceanic pCO2 and its drivers over the last two decades, Global Biogeochem. Cycles, 26, GB2021, doi:10.1029/2011GB004095, (2012).
A. Lenton1, N. Metzl2, T. Takahashi3, M. Kuchinke1, R. J. Matear1, T. Roy2, S. C. Sutherland3, C. Sweeney4, and B. Tilbrook1 (1Wealth from Ocean Flagship, CSIRO Maine and Atmospheric Research, Hobart, Tasmania, 2LOCEAN-IPSL, CNRS, Université Pierre et Marie Curie, Paris, 3LDEO, Earth Institute, Columbia University, Palisades, New York, 4Global Monitoring Division, ESRL, NOAA, Boulder, Colorado)

 海洋におけるpCO2増加速度を調査するため、440万以上の海洋における二酸化炭素分圧(pCO2)の観測データを使った。アルカリ度と溶存無機炭素を復元するため、海洋表層における水温と塩分の測定値と一致したpCO2の測定値を使った。そこから、異なった海域において何がpCO2増加速度を推進しているのかを理解する。もしpCO2増加速度が大気のCO2増加速度よりも大きい(または小さい)ならば、その海域では大気CO2の取り込みが減少(または増加)していると解釈できる。西部北太平洋亜極域、西部北太平洋亜熱帯と南大洋だけ、pCO2増加速度を計算するための時空間的に十分な観測値がある。これらの海域をもとに、駆動源(物理的と生物的)の組み合わせによって海洋炭素吸収源の強度が過去20年にわたって減少している事を発見した。北太平洋亜極域における夏に減少した大気CO2の取り込みは生物生産の変化と関連している。北太平洋亜熱帯における冬に増加した取り込みは増加した生物生産と関連している。南大洋のインド洋と太平洋の海域における冬の減少した大気CO2の取り込みは正の南半球環状モード(SAM)応答と関連している。逆に、より成層化している大西洋の海域における夏の増加した取り込みは、増加した生物生産と減少した鉛直方向の供給と関連している。計算された成長速度が検出限界であるときと大きな不確実性を持つとき、気候変動と変化を切り分ける事ができない。全球海洋におけるpCO2とその駆動源(溶存無機炭素とアルカリ度を含む)の継続的観測は、海洋炭素の吸収が未来にはどのように進化し、どの過程がこの変化を駆動しているのかを検出または理解するための鍵である。

COLLOQUIUM No. 628 (17:00-, 28 June 2018)

Mr. K. Fujita (Chair: Prof. Watanabe)



Western Pacific atmospheric nutrient deposition fluxes, their impact on surface ocean productivity. Global Biogeochem. Cycles, 28, 712–728 (2014).
M. Martino1, D. Hamilton1, A. R. Baker1, T. D. Jickells1, T. Bromley2, Y. Nojiri3, B. Quack4, P. W. Boyd5,6(1COAS, UEA, Norwich, UK, 2NIWA, Wellington, New Zealand, 3NIES, Tsukuba, Japan, 4Helmholtz-Zentrum für Ozeanforschung Kiel (GEOMAR), Marine Biogeochemie/Chemische Ozeanographie, Kiel, Germany, 5NIWA Centre for Chemical and Physical Oceanography, Department of Chemistry, University of Otago, Dunedin, New Zealand, 6Now at IMAS, University of Tasmania, Hobart, Tasmania, Australia)

 主栄養素と微量栄養素の⼤気からの沈積は、特に低緯度海域の⼀次⽣産の駆動において重要な役割を担っている。本研究では、⻄部太平洋(約25°N〜20°S)での5 つの航海によるサンプリングのエアロゾルの主要なイオンの測定の結果を報告した。また、南⼤⻄洋の横断帯(約50°N〜50°S)での測定結果と、完全に独⽴で全く同じ実験室で収集され、分析されたエアロゾルの結果とを⽐較した。本研究では、エアロゾルの主要な栄養種(窒素(N), リン(P), 鉄(Fe))の供給源とそれらの化学量論を議論した。⼤陸のダストと⼈間活動による放出によって強く影響されている北半球の海盆と⼀⾒北太平洋より強く影響されているように思える北⼤⻄洋において、著しい南北の勾配がはっきり表れた。これら栄養素の⼤気からの供給速度と⻄部太平洋の熱帯域における⼤気からの沈積の潜在的な影響を⾒積もった。本研究の結果は、⼤気の沈積がその場での植物が必要とする量に⽐べてP が不⾜していることを⽰唆した。これらの発⾒は、⼤気からのN、Fe、P の供給が、表層においてエアロゾルのP の枯渇を補うために残りの過剰なリン(P *)のいくつかを利⽤している⼀次⽣産を増加させることを⽰している。局所的な⼀次⽣産は、余剰な⼤気中の鉄とP *に刺激される窒素固定によってさらに⾼められる。本研究の化学量論の計算は、0.1 µmol L-1 のP *が数ヶ⽉間に及ぶ⼤気からの供給におけるP の枯渇を相殺することを明らかにした。この研究は、⻄部太平洋の熱帯域において⼤気からの沈積が⼀次⽣産の約10%を駆動している可能性があることを⽰している。

COLLOQUIUM No. 627 (17:00-, 21 June 2018)

Ms. D. Yan (Chair: Prof. Suzuki)



The seeding of ice algal blooms in Arctic pack ice: The multiyear ice seed repository hypothesis. J. Geophys. Res. Biogeosci. 122, 1529–1548 (2017).
L. M. Olsen1, S. R. Laney2, P. Duarte1, H. M. Kauko1, M. Fernández-Méndez1, C. J. Mundy3, A. Rösel1, A. Meyer1, P. Itkin1, L. Cohen1, I. Peeken4, A. Tatarek5, M. Róźańska-Pluta5, J. Wiktor5, T. Taskjelle6, A. K. Pavlov1, S.R. Hudson1, M. A. Granskog1, H. Hop1,7, and P. Assmy1 (1NPI, Fram Centre, 2Biology Department, WHOI, 3CEOS, University of Manitoba, 4AWI Helmholtz Center for Polar and Marine Research, 5IOPAS, 6Department of Physics and Technology, University of Bergen, 7Department of Arctic and Marine Biology, Faculty of Biosciences, Fisheries and Economics, UiT, Arctic University of Norway)

 During the Norwegian young sea ICE expedition (N-ICE2015) from January to June 2015 the pack ice in the Arctic Ocean north of Svalbard was studied during four drifts between 83° and 80°N. This pack ice consisted of a mix of second year, first year, and young ice. The physical properties and ice algal community composition was investigated in the three different ice types during the winter-spring-summer transition. Our results indicate that algae remaining in sea ice that survived the summer melt season are subsequently trapped in the upper layers of the ice column during winter and may function as an algal seed repository. Once the connectivity in the entire ice column is established, as a result of temperature-driven increase in ice porosity during spring, algae in the upper parts of the ice are able to migrate toward the bottom and initiate the ice algal spring bloom. Furthermore, this algal repository might seed the bloom in younger ice formed in adjacent leads. This mechanism was studied in detail for the dominant ice diatom Nitzschia frigida. The proposed seeding mechanism may be compromised due to the disappearance of older ice in the anticipated regime shift toward a seasonally ice-free Arctic Ocean.

COLLOQUIUM No. 626 (17:00-, 14 June 2018)

Mr. Z. Chen (Chair: Mr. K. Yoshida)



The effect of organic carbon on fixed nitrogen loss in the eastern tropical South Pacific and Arabian Sea oxygen deficient zones. Limnol. Oceanogr., 59, 1267–1274 (2014).
B. X. Chang1,2, J. R. Rich3, A. Jayakumar2, H. Naik4, A. K. Pratihary4, R. G. Keil1, B. B. Ward2, and A. H. Devol1 (1School of Oceanography, University of Washington, 2Department of Geosciences, Princeton University, 3Department of Ecology & Environmental Biology, Center for Environmental Studies, Brown University, 4CSIR Centre for Excellence in Aquatic Biogeochemistry, Chemical Oceanography Division, NIO)

 全球の海洋の3つの主要な酸素欠乏域(ODZs)である東部熱帯南太平洋(ETSP)、東部熱帯北太平洋(ETNP)、とアラビア海(AS)は、海洋の固定窒素(N)損失の大部分と全海洋N損失の半分を占める。有機物の投入は、N除去の2つ主な経路(脱窒およびアナモックス)の絶対的および相対的な重要性を大きく制御する。本研究は、グルコースと天然由来の溶存態および粒子態の有機質(DOMおよびPOM)の添加に対するETSPとAS ODZsでのN損失の応答を調査した。ETSP ODZでは、グルコースの添加は脱窒を増加させたが(5日後に1.6倍増加)、アナモックスは減少した(5日後に14倍減少)。AS ODZでは、DOMではなくPOMのみの脱窒速度が酸素躍層底部で著しくに増加した(2日後に5.4–6.4倍増加)が、第二亜硝酸塩極大では増加しなかった。これらの結果は、本研究時にETSPおよびAS ODZで、有機物供給によって一般に脱窒が制限されたことを示唆しているが、供給される有機物の不安定性も重要であった。興味深いことに、ETSPおよびAS培養で生産された15N2は、アナモックスの影響を考慮すると、反応物に対して二項分布しなかった。これは未知の窒素産生機構またはN除去の経路を示唆した。

COLLOQUIUM No. 625 (17:00-, 7 June 2018)

Mr. J. Li (Chair: Prof. Kameyama)



A survey of carbon monoxide and non-methane hydrocarbons in the Arctic Ocean during summer 2010. Biogeosciences, 10, 1909-1935 (2013).
S. Tran1, B. Bonsang1, V. Gros1, I. Peeken2,3, R. Sarda-Esteve1, A. Bernhardt2, and S. Belviso1 (1LSCE,UVSQ, 2AWI, 3MARUM)

 During the ARK XXV 1+2 expedition in the Arctic Ocean carried out in June–July 2010 aboard the R/V Polarstern, we measured carbon monoxide (CO), nonmethane hydrocarbons (NMHC) and phytoplankton pigments at the sea surface and down to a depth of 100 m. The CO and NMHC seasurface concentrations were highly variable; CO, propene and isoprene levels ranged from 0.6 to 17.5 nmol L-1, 1 to 322 pmol L-1 and 1 to 541 pmol L-1, respectively. The CO and alkene concentrations as well as their sea–air fluxes were enhanced in polar waters off of Greenland, which were more stratified because of ice melting and richer in chromophoric dissolved organic matter (CDOM) than typical North Atlantic waters. The spatial distribution of the surface concentrations of CO was consistent with our current understanding of CO-induced UV photoproduction in the sea. The vertical distributions of the CO and alkenes were comparable and followed the trend of light penetration, with the concentrations displaying a relatively regular exponential decrease down to non-measurable values below 50 m. However, no diurnal variations of CO or alkene concentrations were observed in the stratified and irradiated surface layers. On several occasions, we observed the existence of subsurface CO maxima at the level of the deep chlorophyll maximum. This finding suggests the existence of a nonphotochemical CO production pathway, most likely of phytoplanktonic origin. The corresponding production rates normalized to the chlorophyll content were in the range of those estimated from laboratory experiments. In general, the vertical distributions of isoprene followed that of the phytoplankton biomass. These data support the existence of a dominant photochemical source of CO and light alkenes enhanced in polar waters of the Arctic Ocean, with a minor contribution of a biological source of CO. The biological source of isoprene is observed in the different water masses but significantly increases in the warmer Atlantic waters.

COLLOQUIUM No. 624 (17:00-, 31 May 2018)

Ms. L. Evans (Chair: Prof. Nishioka)



Behavior of trace metals in the sediment pore waters of intertidal mudflats of a tropical wetland. Environ. Toxicol. Chem, 19, 535-542 (2000).
K.-T. Yu1, M. H-W. Lam1, Y.-F. Yen2, and A. P. K. Leung2 (1Centre for Coastal Pollution and Conservation, City University of Hong Kong, 2Department of Chemistry, Hong Kong University of Science and Technology)

 Vertical profiles of dissolved Cd, Cr, Cu, Pb, Zn, Fe, and Mn in the sediment pore waters of the intertidal mudflats of the Mai Po and Inner Deep Bay Ramsar Site of Hong Kong, People’s Republic of China, were measured using the polyacrylamide gel diffusive equilibration thin film (DET) technique. The ranges of concentrations of dissolved Cd, Cr, Cu, Pb, Zn, Fe, and Mn in the pore water of the top 0 to 20 cm of sediment were 2.2 to 10.0 nM, 346.0 to 950.0 nM 243.8 to 454.8 nM, 23.2 to 51.2 nM, 39.8 to 249.5 mM, and 13.4 to 20.7 mM, respectively. Enrichment of these trace metals was observed in the upper 0 to 7 cm layer. Profiles of conditional distribution coefficient, log(KD), of the trace metals and results of multiple regression analysis have revealed that reduction of Mn (hydrous) oxides was the major remobilization mechanism for Cd, Cr, Cu, Pb, and Zn in the mudflats. Benthic diffusive fluxes of these trace metals from the mudflats were also estimated on the basis of the concentration gradients of trace metals between surface sediments and the overlying water column. The magnitude of the estimated diffusive fluxes followed the order Zn > Cr > Cu > Pb > Cd.

COLLOQUIUM No. 623 (17:00-, 24 May 2018)

Mr. K. Yoshida (Chair: Dr. B. Li)



Diurnal variation in the coupling of photosynthetic electron transport and carbon fixation in iron-limited phytoplankton in the NE subarctic Pacific. Biogeosciences, 13, 1091-1035 (2016).
N. Schuback1, M. Flecken2, M. T. Maldonado1, and P. D. Tortell1,3 (1EOAS, University of British Colombia, 2RWTH Aachen University, 3Department of Botany, University of British Colombia)

 高速反復蛍光光度法(FRRF)を含むクロロフィルa可変蛍光解析は、時空間的にこれまで行えなかったような高解像度で植物プランクトンの基礎生産を見積もることを可能するかもしれない。FRRFでの基礎生産速度は、光化学系IIの電荷分離(ETRRCII)の見積もりに基づくが、この値を生態学的に重要な炭素固定の単位に変換する必要がある。ETRRCIIと炭素固定との間の変動の原因を理解することは、植物プランクトンの光合成に関する生理学的な知見を与え、FRRFを基礎生産の測定手段として応用する上で重要である。本研究では、鉄制限海域である東部北太平洋亜寒帯域で植物プランクトンの炭素固定とETRRCIIを同時に測定し、日内周期を明らかにした。ETRRCIIは光利用可能性の日周変化とよく同期したが、炭素固定速度は、鉄制限下では内在的な代謝エネルギー分配の変化に影響を受けているようだった。ETRRCIIと炭素固定速度の異なる日内周期は、ETRRCIIから炭素固定への換算係数(Kc / nPSII)の3.5倍の変動をもたらした。ゆえに、一定のKc / nPSIIを用いると、植物プランクトンの炭素固定の日周変化はFRRFでは十分にとらえることはできない。本研究では、さらに複数の生理学的測定を行うことによって、大きいKc / nPSIIが余剰な光環境下で見られることを明らかにし、FRRFで測定した光合成色素アンテナからの非光化学消光(NPQ)の増加と関連していることを明らかにした。NPQ とKc / nPSIIとの相関はさらなる検証を必要とするが、FRRF測定単独での植物プランクトンの炭素固定速度の見積もりを改良する可能性がある。

COLLOQUIUM No. 622 (17:00-, 17 May 2018)

Mr. K. Fujita (Chair: Prof. Watanabe)



The anthropogenic perturbation of the marine nitrogen cycle by atmospheric deposition: Nitrogen cycle feedbacks and the 15N Haber-Bosch effect. Global Biogeochem. Cycles, 30, 1418-1440 (2016).
S. Yang1 and N. Gruber1 (1Environmental Physics, IBP, ETH Zurich)

 過去100年間、人為起源の窒素放出は海洋への窒素沈積を大きく増加させてきた。しかし、その結果の影響とフィードバック効果はあまり理解されておらず、また定量化されていない。本研究では、窒素沈積の5つのシナリオを用いたCESM(the Community Earth System Model)v1.2の海洋成分(他の全ての強制力は不変だとする)によって1850年から2100年までのシミュレーションを行なった。全球の海洋の純一次生産量はこの栄養塩の増加に応じてほとんど増加しないが、輸送速度が強化され、またそれによって酸素極小海域が拡大することで、遠洋と海底の脱窒や栄養塩の埋没が約5%まで増加する結果となった。さらに、表層の固定窒素の利用効率は強化され、全球の海洋の窒素固定を10%以上減少させる結果となった。これらの負のフィードバックが2000年までに約60%の窒素沈積を除去するにも関わらず、人為起源窒素の流入はその沈積のシナリオ次第で海洋上層のN量を9〜22 Tg N yr-1と変動を大きくさせた。過剰な窒素は高い濃度まで蓄積し、ほとんどの海域で海洋の固定窒素のδ15Nの負の傾向を引き起こす。この傾向を本研究では15N Haber-Bosch効果と呼んでいる。表層の窒素利用効率と窒素のフィードバックの変化によって、NO3-の𝛿15Nも変化する。それによってNO3-の𝛿15Nが、大気からの窒素沈積の変化の全球的な影響を研究する上で良いツールとなるが複雑な記録因子となっていることがわかった。

COLLOQUIUM No. 621 (17:00-, 25 January 2018)

Ms. D. Yan (Chair: Prof. Suzuki)



Photoprotection and recovery of photosystem II in the Southern Ocean phytoplankton, Polar Sci., 12, 5–11 (2017).
T. Katayama1, R. Makabe2, 3, M. Sampei4, H. Hattori5, H. Sasaki6 and S. Taguchi1 (1Faculty of Science and Engineering, Soka University, 2National Institute of Polar Research, 3SOKENDAI, 4Faculty of Fisheries Sciences, Hokkaido University, 5Faculty of Biology, Tokai University, 6Faculty of Science and Engineering, Ishinomaki Senshu University)

 The future shoaling of surface mixed layer depth due to global warming will expose natural assemblages of phytoplankton to increased mean light. Under these conditions, photoprotective acclimation against high light can determine ecological success. We investigated photoprotective responses to sunlight and recovery from photodamage of photosystem II (PSII) in natural assemblages north and south of the Polar Front (PF). The decrease in the maximum quantum yield (Fv/Fm) of PSII during direct sunlight exposure for 2 h was moderated progressively by the enhancement of diatoxanthin synthesis. When the light-exposed cells were incubated under three reduced light conditions, Fv/Fm recovered to more than the initial values north of the PF but did not reach initial values south of the PF. Temperatures higher in the north than the south of the PF could have induced the faster recovery from photodamage of PSII in assemblages north of the PF. These northern assemblages may be able to acclimate to fast-changing light conditions.

COLLOQUIUM No. 620 (17:00-, 18 January 2018)

Ms. X. Yu (Chair: Prof. Suzuki)



Phytoplankton pigment absorption: A strong predictor of primary productivity in the surface ocean. Deep-Sea Res. Pt I, 54, 155-163 (2007).
Marra, J1, C. C. Trees2, J. E. O’Reilly3 (1Lamont-Doherty Earth Observatory of Columbia University, 2Center for Hydrologic Optics and Remote Sensing, San Diego State University, 3Northeast Fisheries Science Center, NOAA)

 Over a range of trophic conditions in the ocean, we argue that variations in productivity are more closely related to variations in phytoplankton absorption than to variations in the chlorophyll-a (Chl-a) concentration. Our analysis suggests that environmental variability is expressed through the absorption properties of phytoplankton pigments rather than their quantity, and that productivity normalized to absorption is relatively invariant in the world ocean. The relationship between primary productivity and phytoplankton absorption makes possible a more direct approach to the estimation of ocean productivity from satellite sensors.

COLLOQUIUM No. 619 (17:00-, 21 December 2017)

Ms. R. Nitanai (Chair: Prof. Suzuki)



Temporal variability of nitrogen fixation and particulate nitrogen export at Station ALOHA, Limnol. Oceanogr., 62, 200–216 (2017).
D. Böttjer1,2, J. E. Dore3, D. M. Karl1,2, R. M. Letelier2,4, C. Mahaffey5, S. T. Wilson1,2, J. Zehr2,6, and M. J. Church1,2 (1Department of Oceanography, SOEST, 2Daniel K. Inouye C-MORE, 3Department of LRES, 4CEOAS, OSU, 5Department of Earth, Ocean, and Ecological Sciences, 6Ocean Sciences Department)

 我々は、約9年(2005年6月–2013年12月)の北太平洋亜熱帯循環域内のStation ALOHA (22°45‘N, 158°W)における海洋上部(0 mから125 m)の窒素固定速度測定値を、150 mにおける粒子態窒素(PN)輸送と組み合わせて、報告する。2005年6月から2012年6月までの間、ガス泡とした15N2のトレーサー添加に基づき窒素固定速度が測定された。2012年 8月を最初として、初めに15N2を濾過した海水に溶かし、その15N2に富んだ水を窒素固定培養容器に加えることにした。方法論の直接比較によって、15N2に富んだ海水を添加した場合の深度積算速度は、15N2のガス泡を添加した場合の2倍という堅固な関係が明らかになった。この関係に基づいて、測定初期の値を修正し、得られた窒素固定速度を全時系列(n=71)で平均化したところ、230 ± 136 µmol N m-2 d-1であった。同位体マスバランスモデルと組み合わせた沈降PNの15N同位体組成の解析により、2006–2013年の間、窒素固定がPN輸送の26–47 %を支えていたことが明らかになった。これら寄与率と測定された窒素固定速度から導き出された窒素輸送は、502–919 µmol N m-2 d-1の範囲内であり、これは1.5–2.7 mol C m-2 yr-1の純群集生産(NCP)速度に相当し、同観測点で行われた過去の独立したNCP推定値と一致した。

COLLOQUIUM No. 618 (17:00-, 17 December 2017)

Mr. I. Nakagawa (Chair: Mr. Shibano)



The influence of mesoscale physical structure in the phytoplankton taxonomic composition of the subsurface chlorophyll maximum off western Baja California. D. S. Res. Ocgraph., 70, 91-102 (2012).
A. Almazan-Becerril1, D. Rivas2, E. Garcie-Mendoza2 (1Unidad de Ciencias del Agua, 2Departamento de Oceanografıa Biologica)

 SCMの分布やその層内での植物プランクトンの種組成、そして光合成活性についての研究が2003年10月にバハカリフォルニアで行われた。SCMの特徴は水門地理学的な変動と関連付けられており、その間における中規模の 物理的構成とも関連付けられた。SCMではchemotaxonomic研究によって、7つの植物プランクトンのグループが検出された。それぞれ、珪藻・円石藻・黄色藻類・プラシノ藻類・クリプト藻類・プロ黒尾コッカス・シアノバクテリアである。 これらのグループの分布は異なっており、亜寒帯や亜熱帯、熱帯の水の相互関係によって特徴づけられる循環パターンと関連づけられた。渦と蛇行流がこのエリアで検出され、それらの構成はSCMの震度や植物プランクトンの 光合成効率、クロロフィル濃度に直接影響を及ぼした。高いクロロフィル濃度(1.6 mg m-3)と光合成活性で特徴付けられる渦は、対象海域の北部で検出された。セドロス島の北西部に位置する渦だと、 その真ん中はクロロフィル濃度が1.2 mg m-3で他はモード水と似ており、それは最も高いクロロフィル濃度と光合成活性を示した。また、クロロフィル濃度と光合成活性はこれらの渦の外側で低くなった。 シアノバクテリアはこれらのエリアのSCMで支配的であった。

COLLOQUIUM No. 617 (17:00-, 17 December 2017)

Ms. R. Banba (Chair: Mr. Shibano)



Both soluble and colloidal iron phases control dissolved iron variability in the tropical North Atlantic Ocean. Geochim. Cosmochim. Acta Res. 125, 539-550 (2014).
J. N. Fitzsimmons1, E. A. Boyle2 (1MIT/WHOI Joint Program in Chemical Oceanography, 2MIT)

 溶存鉄(dFe,< 0.4 µm)の< 0.02 µm サイズ画分である真の溶存態(sFe)鉄と0.02 µm < Fe < 0.4 µm サイズ画分であるコロイド態(cFe)を北大西洋熱帯域の7測点で調査し、そ の結果を同じ地域で調査が行われたBergquist et al.(2007)の溶存鉄のサイズ画分に関する研 究と比較した。北アフリカのダストプルームの風下では、6測点においてcFe が表層dFe プールの80±7%を占め、大気由来のFe はコロイド態鉄として維持されているという仮説 を支持する形となった。クロロフィル亜表層極大層(DCM)において、コロイド態鉄は極 小となるか、完全に消えていた。このことが示唆しているのは、DCM において、cFe は微 生物によって優先的に取り込まれている、あるいはスキャベンジや凝集をうけているとい うことである。再無機化層では、sFe は亜熱帯ジャイアのような測点(76 % sFe ; [sFe] = 0.42±0.03 nmol/kg)と酸素極小域(OMZ)(56% sFe ; [sFe] = 0.65±0.03 nmol/kg)の両方 で支配的な画分となった。酸素濃度が中間の測点(100-110 µmol/kg)における再無機化 層でのみ、コロイド態鉄が支配的となった(dFe の58%寄与)。このことによって、Fe が 多いOMZ とFe が少ないジャイアの水の混合によって、cFe はdFe を減少させる導管とし ての役割を果たしている可能性が示された。北大西洋深層水(NADW)は典型的なsFe 濃 度である0.34±0.05nmol/kg であった。底層水と混合しているNADW/大西洋底層水で構成 されている最も深いサンプルは、大西洋中央海嶺を通過する間に熱水噴出孔からのFe の インプットがあることで、~0.1 nmol/kg に達していた。このサンプルでは、sFe はdFe と 一致して増加しなかった。このことから、潜在的な熱水由来のFe の寄与はコロイド態で あることが示された。概して、この研究の結果は、コロイド画分のFe が主としてdFe の 変動性をコントロールしているというBergquist et al.(2007)の以前の仮説に反するものであ った。代わりに、真の溶存態・コロイド態Fe は変動的であり、北大西洋にわたって観測 されるdFe の変動性に両方が寄与しているということを示唆した。DCM 以深において、 dFe がおおよそ50―50%真の溶存態とコロイド態に分画されるということは、2つの分画 メカニズムのうち1 つが維持されることを示唆している(1)真の溶存態とコロイド態Fe の交換速度は“定常状態”に達していて、地域性を超えて、独自に分画されたFe ソース によって覆われることが可能である。(2)2つのサイズ間でFe と結合している配位子 の分画は外洋では変動的で、dFe のサイズ画分を直接コントロールしている。

COLLOQUIUM No. 616 (17:00-, 7 December 2017)

Ms. S. Shukuda (Chair: Mr. Yamasaki)



Estimating carbonate parameters from hydrographic data for the intermediate and deep waters of the Southern Hemisphere oceans, Biogeosciences, 10, 6199–6213, (2013).
H. C. Bostock1, S. E. Mikaloff Fletcher1 and M. J. M. Williams1 (1National Institute of Water and Atmospheric Research Ltd.)

 全球データセットから海洋炭素系データを使う事によって、いくつかの線形重回帰(MLR) アルゴリズムを構築した。これらは、水理学データ(温度、塩分、溶存酸素)から南緯25° より南側の海域における中層水、底層水のアルカリ度と溶存無機炭素(DIC)を見積もる。 モンテカルロ法を用いて、27.5 のポテンシャル密度(σθ)において、異なるMLR アルゴ リズムにより、2 つの領域の最適な区切り(ブレイクポイント)を求めた。このアルゴリズム は、DIC についてはR2=0.98、アルカリ度についてはR2=0.91 の良い見積もりを与える。 また、アラゴナイトとカルサイト飽和度についてもR2=0.99 と良く一致する。これらのア ルゴリズムとthe CSIRO Atlas of Regional Seas (CARS)を合わせることで、カルサイト飽 和面(CSH)とアラゴナイト飽和面(ASH)を南大洋において0.5°の空間分解能でマッピ ングした。これらのマップは、以前にグリッドされたGLODAP のデータよりも、より詳細 でより海洋学と調和している。この高い分解能のASH マップは、極前線(Polar front)にお いて劇的に浅くなることを明らかにした。南緯40°より北側のCSH は、大西洋で最も深 く(~4000m)、太平洋でより浅く(~2750m)なっている。一方、CHS はインド海にお いては3200~3400mに位置する。海洋における人為起源二酸化炭素の取り込みは、中層水 と底層水でのDIC と水理学データ間の関係を時間とともに変化させるであろう。そのため、 継続的なサンプリングが必要になる。また、このMLR アルゴリズムは、これらの変化を説 明するために、将来、調節することが必要になるだろう。

COLLOQUIUM No. 615 (17:00-, 16 November 2017)

Mr. R. Yamasaki (Chair: Ms. Li)



Slow acidification of the winter mixed layer in the subarctic western North Pacific, J. Geophys. Res. Oceans, 122, 6923-6935 (2017).
M. Wakita1, A. Nagano2, T. Fujiki2 and S. Watanabe1 (1MIO, JAMSTEC, 2Research and Development Center for Global Change, JAMSTEC)

 本研究は1999年から2015年に集められた炭酸系データを用いて、北太平洋西部亜寒帯域における時系列測点での海洋酸性化の研究を行った。測点K2での年平均pHは、人為起源CO2の海洋による取り込みに主に応答して、 0.0025 ± 0.0010 year−1の速さで減少した。Revelle factorは急激に上昇(0.046 ± 0.022 year−1)し、この海域における緩衝能力が他の測点よりもより速く減少していることを示している。西部亜寒帯域において、 冬季のpHは0.0008 ± 0.0004 year−1とゆっくりとした速さで減少している。これは全炭酸(DIC)の増加の速さが弱まったこと及び、全アルカリ度(TA)の増加が寄与していた。DIC増加の弱まりは、密度躍層の沈下と上層の 密度躍層からの鉛直拡散フラックスの減少に伴う表層水密度の減少により引き起こされた。これらの物理的な変化は、西部亜寒帯渦の北方向への収縮と地球温暖化により主に生じた。一方、TAの増加に対する表層水密度の減少の 寄与は、弱まった鉛直混合フラックスの寄与により打ち消されている。冬季のTAの増加は、冬の間、生物の石灰化作用が弱まることによるTAの蓄積により主に引き起こされると推測した。

COLLOQUIUM No. 614 (17:00-, 9 November 2017)

Ms. B. Li (Chair: Mr. Yamasaki)



Annual sea-air CO2 fluxes in the Bering Sea: Insights from new autumn and winter observations of a seasonally ice-covered continental shelf. J. Geophys. Res. Oceans, 119, 6693-6708 (2014)
J. N. Cross1, 2, J. T. Mathis1, 2, K. E. Frey3, C. E. Cosca1, S. L. Danielson2, N. R. Bates4, R. A. Feely1, T. Takahashi5 and W. Evans1, 2 (1NOAA, PMEL, 2OARC, University of Alaska, 3Graduate School of Geography, Clark University, 4BIOS, 5LDEO)

 High-resolution data collected from several programs have greatly increased the spatiotemporal resolution of pCO2(sw) data in the Bering Sea, and provided the first autumn and winter observations. Using data from 2008 to 2012, monthly climatologies of sea-air CO2 fluxes for the Bering Sea shelf area from April to December were calculated, and contributions of physical and biological processes to observed monthly sea-air pCO2 gradients (ΔpCO2) were investigated. Net efflux of CO2 was observed during November, December, and April, despite the impact of sea surface cooling on ΔpCO2. Although the Bering Sea was believed to be a moderate to strong atmospheric CO2 sink, we found that autumn and winter CO2 effluxes balanced 65% of spring and summer CO2 uptake. Ice cover reduced sea-air CO2 fluxes in December, April, and May. Our estimate for ice-cover corrected fluxes suggests the mechanical inhibition of CO2 flux by sea-ice cover has only a small impact on the annual scale (<2%). An important data gap still exists for January to March, the period of peak ice cover and the highest expected retardation of the fluxes. By interpolating between December and April using assumptions of the described autumn and winter conditions, we estimate the Bering Sea shelf area is an annual CO2 sink of ∼ 6.8 Tg C yr−1. With changing climate, we expect warming sea surface temperatures, reduced ice cover, and greater wind speeds with enhanced gas exchange to decrease the size of this CO2 sink by augmenting conditions favorable for greater wintertime outgassing.

COLLOQUIUM No. 613 (17:00-, 2 November 2017)

Mr. Y. Shibano (Chair: Ms. Evans)



Okhotsk Sea intermediate water formation deduced from oxygen isotope systematics. J. Geophys. Res., 106, 31.075-31,084, (2001).
M. Yamamoto1, N. Tanaka1 and S. Tsunogai1 (1Graduate School of Environment Earth Science, Hokkaido University)

 オホーツク海中層水の形成のメカニズムを明らかにするために、オホーツク海と北太平洋西部周辺で採集されたサンプルにおいて、塩分や他のルーチン測定項目及び、δ18Oが分析された。オホーツク海のδ18と塩分の関係は、オホーツク海に水を送っている太平洋西部亜極域のδ18Oと塩分の関係と明らかに異なっていた。オホーツク海の中層水は、同密度では西部亜極域の水よりも塩分が低かったが、δ18Oの値が等しい部分、特に密度が26.5<σθ<27.0の範囲では、より高い塩分であった。これはおそらく、海氷の形成中につくられた濃い陸棚水と付近の水との混合が原因である。海氷の形成によって取り除かれた淡水の量が、オホーツク海中層水の塩分偏差から見積もられた。オホーツク海中層水から取り除かれた淡水の計算量は、オホーツク海において0.6-3.8年で形成される海氷量と一致した。これは、オホーツク海中層水の残留時間は数年であることを示している。

COLLOQUIUM No. 612 (17:00-, 26 October 2017)

Mr. K. Fujita (Chair: Mr. Yamasaki)



Increasing anthropogenic nitrogen in the North Pacific Ocean. Science, 346, 1102-1106 (2014).
Il-N. Kim1, K. Lee1, N. Gruber2, D. M. Karl3, J. L. Bullister4, S. Yang2 and T-W. Kim5 (1School of Environmental Sciences and Engineering, POSTECH. 2Environmental Physics Group, IBP. 3Daniel K. Inouye C-MORE, University of Hawaii at Manoa. 4PMEL, NOAA. 5Ocean Circulation and Climate Research Division, KIOST.)

 近年、北東アジアにおいて人為起源の活性化窒素の放出が増加しており、それにより北太平洋の広範囲に渡って多くの窒素が蓄積され、その結果海洋上層において硝酸(N)濃度が著しく増加した。リン酸(P)に比べて過剰なNの増加速度はアジア大陸付近で最高(約0.24 micromoles kg-1 year-1)であり、北太平洋の東方向に行くにつれて速度は減少していることがわかった。これは大気の窒素蓄積の量と分布に一致している。北太平洋上層の人為由来のN増加は、北太平洋におけるN制限された海域の一次生産を高め、潜在的に北太平洋を長期的にN制限からP制限へと変化をもたらすかもしれない。

COLLOQUIUM No. 611 (17:00-, 19 October 2017)

Ms. O. T. N. Bui (Chair: Dr. Kameyama)



A significant methane source over the Chukchi Sea shelf and its sources. Cont. Shelf Res. 148, 150-158 (2017).
Y. Li1, L. Zhan1, J. Zhang1, L. Chen1, J. Chen2, Y. Zhuang2 (1 Key Laboratory of GCMAC, Xiamen, China, 2 Laboratory of Marine Ecosystem and Biogeochemistry, Hangzhou, China)

  Dissolved methane (CH4) was measured at various depths in the western Arctic Ocean. The CH4 concentrations at the surface show an increasing trend northward toward stations at the shelf break and a decreasing trend toward stations in the Canada Basin. The mean sea-to-air flux is estimated to be 10.08 µmol/m2/d, indicates that the Chukchi Sea shelf (CSS) is an active site of CH4. Methane concentrations at the shelf stations increase from the surface to the bottom, and the maximum nutrient concentrations occur in the bottom layer. Strong correlations exist between CH4 and PO43-, SiO42-, or NO2-, suggesting that the production of CH4 is likely related to the degradation of organic matter in the sediment, supporting a biogenic source. At the slope and basin stations, the maximum values were observed in the subsurface of the upper halocline layer (UHL), and the concentrations decrease with increasing depth. The CH4 concentrations are elevated by ~7.9 nmol/L in the UHL compared with the homogeneous CH4 concentrations observed in the deep water. The elevated values in the UHL result primarily from northward spreading of CH4-rich water from the shelf. A mass balance model was used to calculate the CH4 budget in the CSS. The results show that effluxes of CH4 from the sediment-water interface and the in situ production of CH4 represent the major sources of CH4 over the CSS (95%). The main outputs for CH4 in the CSS are the sea-to-air flux and oxidation of CH4 in the water column, which account for 95% of the CH4 exports.

COLLOQUIUM No. 610 (17:00-, 12 October 2017)

Ms. L. Evans (Chair: Mr. Shibano)



Sediment transport by sea ice in the Chukchi and Beaufort Seas: Increasing importance due to changing ice conditions? Deep-Sea Res. 52, 3281-3302 (2005).
H. Eicken1, R. Gradinger2, A. Gaylord3, A. Mahoney1, I. Rigor4, and H. Melling5. (1Geophysical Institute, UAF. 2Institute of Marine Science, UAF. 3Nuna Technologies. 4APL-UW. 5Institute of Ocean Sciences.)

 Sediment-laden sea ice is widespread over the shallow, wide Siberian Arctic shelves, with off-shelf export from the Laptev and East Siberian Seas contributing substantially to the Arctic Ocean’s sediment budget. By contrast, the North American shelves, owing to their narrow width and greater water depths, have not been deemed as important for basin-wide sediment transport by sea ice. Observations over the Chukchi and Beaufort shelves in 2001/02 revealed the widespread occurrence of sediment-laden ice over an area of more than 100,000 km2 between 68 and 74˚N and 155 and 170˚W. Ice stratigraphic studies indicate that sediment inclusions were associated with entrainment of frazil ice into deformed, multiple layers of rafted nilas, indicative of a flaw-lead environment adjacent to the landfast ice of the Chukchi and Beaufort Seas. This is corroborated by buoy trajectories and satellite imagery indicating entrainment in a coastal polynya in the eastern Chukchi Sea in February of 2002 as well as formation of sediment-laden ice along the Beaufort Sea coast as far eastward as the Mackenzie shelf. Moored upward-looking sonar on the Mackenzie shelf provides further insight into the ice growth and deformation regime governing sediment entrainment. Analysis of Radarsat Synthetic Aperture (SAR) imagery in conjunction with bathymetric data help constrain the water depth of sediment resuspension and subsequent ice entrainment (>20m for the Chukchi Sea). Sediment loads averaged at 128 t km-2, with sediment occurring in layers of roughly 0.5m thickness, mostly in the lower ice layers. The total amount of sediment transported by sea ice (mostly out of the narrow zone between the landfast ice edge and waters too deep for resuspension and entrainment) is at minimum 4 x 106 t in the sampling area and is estimated at 5–8 x 106 t over the entire Chukchi and Beaufort shelves in 2001/02, representing a significant term in the sediment budget of the western Arctic Ocean. Recent changes in the Chukchi and Beaufort Sea ice regimes (reduced summer minimum ice extent, ice thinning, reduction in multi-year ice extent, altered drift paths and mid-winter landfast ice break-out events) have likely resulted in an increase of sediment-laden ice in the area. Apart from contributing substantially to along- and across-shelf particulate flow, an increase in the amount of dirty ice significantly impacts (sub-) ice algal production and may enhance the dispersal of pollutants.

COLLOQUIUM No. 609 (17:00-, 3 August 2017)

Mr. Z. Chen (Chair: Ms. Li)



Fixed nitrogen loss from the eastern tropical North Pacific and Arabian Sea oxygen deficient zones determined from measurements of N2:Ar. Global Biogeochem. Cycles, 26, GB3030, doi:10.1029 (2012).
B. X. Chang1,2, A. H. Devol1 and S. R. Emerson1 (1School of Oceanography, University of Washington, 2Now at Department of Geosciences, Princeton University)

 脱窒による過剰N2 (N2 excess)の見積に関する先行研究は、硝酸塩不足型手法(nitrate deficit-type methods)が主要な酸素枯渇海域(ODZ)における固定窒素(N)損失の過小評価であることを示唆している。過剰N2方法は固定N対リン酸塩あるいは酸素の化学量論の仮定に依存しないため、N損失の経路に関する不確さを避け、硝酸塩不足型手法に比べて、利点を持つ。東部北太平洋熱帯域での二つの観測点とアラビアODZでの一つの観測点からのN2:Arの測定は、脱窒により過剰N2を決めるために用いられている。この二つの海域において、過剰N2は量的に固定Nの不足と匹敵した。東部北太平洋域熱帯ODZにおいて、表層の過剰N2は約0 µMであり、固定Nの不足の最大値13.5±1.5と12.3±1.5 µM Nに比べ、13.7±1.8と10.8±1.9 µM Nの最大値まで上昇する。アラビアODZ域において、固定Nの不足の最大値が12.5±1.0 µM Nであることに比べ、過剰N2の最大値は11.1±1.5 µM Nである。ODZ域の海水の体積と滞留時間が同じと考えた場合、これらの結果は、先行研究の硝酸塩不足型手法に基づくODZにおける固定Nの損失の見積もりは妥当であろうことを示唆する。

COLLOQUIUM No. 608 (17:00-, 27 July 2017)

Ms. S. Shukuda (Chair: Prof. Watanabe)



Empirical algorithms to estimate water column pH in the Southern Ocean. Geophys. Res. Lett, 43, 3415–3422 (2016).
N. L. Williams1, L. W. Juranek1, K. S. Johnson2, R. A. Feely3, S. C. Riser4, L. D. Talley5, J. L. Russell6, J. L. Sarmiento7, and R. Wanninkhof8 (1College of Earth, Ocean, and Atmospheric Sciences, Oregon State University, 2Monterey Bay Aquarium Research Institute, 3Pacific Marine Environmental Laboratory, National Oceanic and Atmospheric Administration, 4School of Oceanography, University of Washington, 5Scripps Institution of Oceanography, University of California, 6Department of Geosciences, University of Arizona, 7Program in Atmospheric and Oceanic Sciences, Princeton University, 8Atlantic Oceanographic and Meteorological, Laboratory, National Oceanic and Atmospheric Administration

 The Global Ocean Ship-Based Hydrographic Investigations Program(GO−SHIP)で測定される高精度なパラメーター(水温・塩分・圧力・硝酸・酸素)を使うことで、南大洋の太平洋領域のpHを見積もるアルゴリズム(経験的関数)を得た。水温・塩分・圧力・硝酸の組み合わせを用いて見積もられたpHに対しては決定係数(R2)0.98であり、一方、水温・塩分・圧力・酸素を用いて見積もられたpHに対しては、R2は0.97であった。また,平均二乗誤差(RMS)は前者については0.010、後者については0.008であった。これらのアルゴリズムをThe Southern Ocean Carbon and Climate Observations and Modeling project (SOCCOM) のバイオフロートに適用した。このフロートには、pH・硝酸・酸素・蛍光発光・後方散乱を測定する新しいセンサーが搭載されている。ここで得たアルゴリズムは、pHセンサーがないフロートによるpHの見積もりに用いられ、また、pHセンサーが搭載されているフロートで得られたpHの値を確認し、補正するのに用いられた。これらの補正されたフロートデータは、0.05-0.08 pHの測定範囲をもつ一週間ごとのpH情報を与え、その結果、南大洋の太平洋領域において初めてpHの季節変動を明らかにした。

COLLOQUIUM No. 607 (17:00-, 27 July 2017)

Ms. R. Nitanai (Chair: Prof. Suzuki)



Basin scale variability of active diazotrophs and nitrogen fixation in the North Pacific, from the tropics to the subarctic Bering Sea. Global Biogeochem. Cycles, 31, 996–1009 (2017).
T. Shiozaki1,2, D. Bombar3, L. Riemann3, F. Hashihama4, S. Takeda5, T. Yamaguchi6, M. Ehama4, K. Hamasaki1, and K. Furuya6 (1Atmosphere and Ocean Research Institute, University of Tokyo, 2Now at Research and Development Center for Global Change, JAMSTEC, 3Marine Biological Section, Department of Biology, University of Copenhagen, 4Department of Ocean Sciences, Tokyo University of Marine Science and Technology, 5Faculty of Fisheries, Nagasaki University, 6Department of Aquatic Bioscience, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, University of Tokyo)

 窒素固定微生物は生物利用可能な窒素をプランクトン群集へ提供し、多くの海域での生産性に大いに影響を与える。シアノバクテリアグループは伝統的に海洋の主要な窒素固定生物と考えられてきたが、後にシアノバクテリアではない、おそらく従属栄養性である窒素固定生物が広範に存在し、その窒素固定における潜在的な重要性が見出された。しかしながら、異なる窒素固定生物グループの分布や活性は、多くの外洋生態系において、未だかなり制限を受けている。ここで、我々は太平洋中央部の赤道域からベーリンク海までの7500 kmにわたる南北断面に沿って、窒素固定生物の群集構造や活性の調査を行った。窒素固定は亜熱帯循環表層水中での新生産の最大84 %に貢献し、その地点での窒素固定群集はガンマプロテオバクテリア γ-2744A11や高活性のシアノバクテリア系統型(全nifH転写量の50 %以上を寄与)を含んでいた。窒素固定は、時々、150 m深まで見られ、北緯35 度付近の亜熱帯循環の端まで水平的に拡大していた。窒素固定はベーリング海大陸棚北側でさえも発見された。ベーリング海大陸棚のアラスカ沿岸水中では、低い硝酸塩濃度と高い溶存鉄濃度により、窒素固定生物の増殖が促進されていたように思われ、それには表層付近で豊富(1.2×105 nifH gene copies L−1)に存在していたUCYN-A2の顕著な役割を含んでいた。本研究は、ベーリング海での窒素固定の証拠を提供し、北太平洋の熱帯・亜熱帯循環と冷たい北側海域の水塊間おいて、窒素固定微生物の組成に明らかな対照性があることを提案している。

COLLOQUIUM No. 606 (17:00-, 6 July 2017)

Mr. Y. Shibano (Chair: Ms. Evans)


Vertical material flux under seasonal sea ice in the Okhotsk Sea north of Hokkaido. Polar Science, 2, 41-54, (2008).
T. Hiwatari1, K. Shirasawa3, Y. Fukamachi3, R. Nagata4, T. Koizumi5, H. Koshikawa1, K. Kohata2 (1Asian Environmental Group, NIES, 2Water and Soil Environmental Division, NIES, 3ILTS, Hokkaido University, 4Okhotsk Garinko Tower, 5Mikuniya Co)

 2005年1月13日から3月23日にかけて、オホーツク海沖合の測点に設置された時系列セジメントトラップを用いて、季節海氷下の下方向の物質のフラックスが測定された。鉱物由来の物質の最大フラックス(753 mg-2 day-1)と有機物の最大フラックス(主にデトリタス:333 mg m-2 day-1)が、1月13日から2月9日の、海氷が岸に吹き流され範囲を拡大させる時期に記録された。珪藻のフラックスを示す、フィーカルペレットのような有機物(81-93 mg m-2 day-1)やバイオシリカのようなオパール(51-67 mg m-2 day-1)は、2月10日から3月9日の、海氷が全面を覆う期間に得られたセジメントトラップサンプル中に豊富に存在した。顕微鏡での観察によって、フィーカルペレットはほとんど珪藻の被殻であることが明らかになり、このことは海氷が全面を覆う期間に、アイスアルジ―を動物プランクトンが活発に捕食していたことを示している。3月10日から23日の海氷の後退期には、植物プランクトンのフラックスが急速に増加し(9.5 cells m-2 day-1 から22.5×106 cells m-2 day-1)、このことは海氷の融解につれて水柱へ植物プランクトンが放出されたことを反映している。我々の結果は、生物由来と鉱物由来の沈降物質の量と質は、真冬における海氷の季節的な広がり次第で異なることを説明している。

COLLOQUIUM No. 605 (17:00-, 29 June 2017)

Mr. R. Yamasaki (Chair: Ms. B. Li)



Influences of riverine and upwelling waters on the coastal carbonate system off Central Chile and their ocean acidification implications. J. Geophys. Res. Biogeosci., 121, 1468-1483 (2016).
C. A. Vargas1,2,3, P. Y. Contreras1,2, C. A. Pérez1, M. Sobarzo4, G. S. Saldías5 and J. Salisbury6 (1Aquatic Ecosystem Functioning Lab, Department of Aquatic System, Faculty of Environmental Sciences and Environmental Sciences Center EULA Chile, Universidad de Concepción, 2Center for the Study of Multiple Drivers on Marine Socio-Ecological Systems, Universidad de Concepción, 3IMO, Universidad de Concepción, 4DOCE and Interdisciplinary Center for Aquaculture Research, Faculty of Natural and Oceanographics Sciences, Universidad de Concepción, 5CEOAS, Oregon State University, 6Institute for the Study of EOS, UNH)

 組み合わされたデータセット及び、現場観測や海洋観測からのデータを結びつけることは、溶存態無機炭素(DIC)やアラゴナイト飽和度の空間的、時間的な変動への河川流出と湧昇過程の影響を確かめるに使われてきた。本研究は、南太平洋沿岸(36°S)において、生産が高い河川の影響を最も受けている湧昇域の1つを対象とした。加えて、異なるDIC供給源の寄与、即ち、陸-海洋領域におけるDICの動態への影響を確かめるためのさらなる研究を行った。おおよそ200kmの範囲に相当するビオビオ河川流域の7つの観測点において、6回のサンプリングを行った。同時に、観測船による3回の調査を近接する大陸棚にて行い、12カ所の観測点で水界地理学データを測定した。その上、6つの観測点では化学分析用のサンプリングを行い、それは2010年から2011年の夏、冬、春を対象とした。本研究の結果より、海へ向かって広がる河口流出流は、冬においてより明白であり、その際、最も高い河川DICフラックスが観測された。河川から海における炭酸系物質は、空間的、時間的規模で変動し、均質的ではなかった。高いDIC、pCO2は、河川流域で観測され、それは人為的な影響をより受けていた。河川流出流でのCO2の過飽和が全ての観測において見られ、それは冬/春においては低いpHを持つ河川水の影響、夏においては高いpCO2を持つ湧昇水の影響であった。河川及び河川流出流における主なDICの供給源は、陸上有機物の利用に相当することがδ13CDICより証拠付けられた。この自然過程と近接する河川の影響を受けた沿岸域における炭酸飽和度との関連より、表層/亜表層水におけるΩaragoniteの未飽和は、生産が高い沿岸域における河川流出と沿岸湧昇の両方の影響を受け、大きく変化していることが示唆された。Ωaragoniteが低い条件は、海洋生物、例えば二枚貝、腹足類、甲殻類、に対して負の生理学的な特性を与えるかもしれない。それ故、河川の影響を受ける場所の局所的な生物群集は、Ωaragoniteの変動がより小さい領域に棲息する生物よりも、海洋酸性化に対して先天的により耐性があり得る。

COLLOQUIUM No. 604 (17:00-, 22 June 2017)

Mr. Qiu (Chair: Prof. Suzuki)



Dynamic biogeochemical provinces in the global ocean. Global Biogeochem. Cycles, 27, 1046–1058 (2013).
G. Reygondeau1,2,3, A. Longhurst4, E. Martinez2,5, G. Beaugrand6, D. Antoine2,7, and O. Maury1 (1IRD, UMR EME 212, CRMHT, 2LOV, CNRS–Université Pierre et Marie Curie, 3CEES, Department of Biosciences, University of Oslo, 4Cajarc, 5MIO, Aix-Marseille University, IRD UMR 235, CNRS/INSU UMR 7294, 6LOG, UMR LOG CNRS 8187, Station Marine, CNRS, Université des Sciences et Technologies de Lille, 7Department of Imaging and Applied Physics, RSSRG, Curtin University)

  In recent decades, it has been found useful to partition the pelagic environment using the concept of biogeochemical provinces, or BGCPs, within each of which it is assumed that environmental conditions are distinguishable and unique at global scale. The boundaries between provinces respond to features of physical oceanography and, ideally, should follow seasonal and interannual changes in ocean dynamics. But this ideal has not been fulfilled except for small regions of the oceans. Moreover, BGCPs have been used only as static entities having boundaries that were originally established to compute global primary production. In the present study, a new statistical methodology based on non-parametric procedures is implemented to capture the environmental characteristics within 56 BGCPs. Four main environmental parameters (bathymetry, chlorophyll a concentration, surface temperature, and salinity) are used to infer the spatial distribution of each BGCP over 1997–2007. The resulting dynamic partition allows us to integrate changes in the distribution of BGCPs at seasonal and interannual timescales, and so introduces the possibility of detecting spatial shifts in environmental conditions.

COLLOQUIUM No. 603 (17:00-, 15 June 2017)

Ms. Evans (Chair: Prof. Nishioka)



Iron in the southeastern Bering Sea: Elevated leachable particulate Fe in shelf bottom waters as an important source for surface waters. Cont. Shelf Res., 30, (2010).
M. P. Hurst1, A. M. Aguilar-Islas2 and K. W. Bruland3 (1Department of Chemistry, Humboldt State University, 2IARC, University of Alaska, 3Department of Ocean Sciences, University of California Santa Cruz)

 Surface transects and vertical profiles of total and leachable particulate Fe, Mn, Al and P, along with dissolved and soluble Fe were obtained during August 2003 in the southeastern Bering Sea. High concentrations of leachable particulate Fe were observed in the bottom waters over the Bering Sea shelf with an unusually high percentage of the suspended particulate Fe being leachable. Leachable particulate Fe averaged 81% of total particulate Fe, and existed at elevated concentrations that averaged 23 times greater than dissolved Fe in the isolated cool pool waters over the mid shelf where substantial influence of sedimentary denitrification was apparent. The elevated leachable particulate Fe is suggested to be a result of sedimentary Fe reduction in surficial sediments, diffusion of Fe(II) from the sediments to the bottom waters, and subsequent oxidation and precipitation of reduced Fe in the overlying bottom waters. Eddies and meanders of the Bering Slope Current can mix this Fe-rich water into the Green Belt at the outer shelf-break front. Elevated levels of leachable particulate Fe were observed in surface waters near the Pribilof Islands where enhanced vertical mixing exists. Storm events and/or cooling during fall/winter with the resultant destruction of the thermally stratified two-layer system can also mix the subsurface water into surface waters where the elevated leachable particulate Fe is a substantial source of biologically available Fe.

COLLOQUIUM No. 602 (17:00-, 8 June 2017)

Ms. R. Banba (Chair: Prof. Nishioka)



Controls on iron distributions in the deep water column of the North Pacific Ocean: Iron(III) hydroxide solubility and marine humic-type dissolved organic matter. J. Geophys. Res., 114, (2009).
S. Kitayama1, K. Kuma1,2 E. Manabe1, K. Sugie1, H. Takata2, Y. Isoda2, K. Toya2, S. Saitoh2, S. Takagi2, Y. Kamei2, and K. Sakaoka2 (1Graduate School of Environmental Science Hokkaido University, 2Faculty of Fisheries Sciences, Hokkaido University)

 西部・中部北太平洋の溶存鉄の鉛直分布は、表層の枯渇・中層の極大・中層以深の深度に伴う減少で特徴づけられており、そしてこの鉛直分布は栄養塩・見かけの酸素要求量・鉄Ⅲ溶解度・腐植様蛍光強度とよく似ていた。深層水の鉄Ⅲ溶解度([Fe(Ⅲ)sol], < 0.025-µm画分)と分布は、500-1500 mの中層で最大となり(~0.6 nM)、また深くなる(5000 m)と徐々に減少するという(~0.3 nM)傾向が両方の地域に見られたにもかかわらず、ディープウォーターカラム中の溶存鉄の濃度([DFe], < 0.22-µm)は西部(0.5-1.2 µM)と比較すると中部(0.3 - 0.6 µM)では半分の濃度であった。西部のディープウォーターカラム中の[D-Fe]が[Fe(Ⅲ)sol]よりも高いことは、西部地域で大気物由来あるいは水平方向の鉄供給が中部よりも多く、沈んでいく有機物の分解による再生が高いという結果である。中部のディープウォーターカラムの[Fe(Ⅲ)sol]と[D-Fe]の値の近似は、[D-Fe]が海水中の鉄Ⅲの溶解度平衡に近いということが寄与したからだろう。中部での[D-Fe]と腐植蛍光強度の強い直線関係と、西部と中部での比較的相関関係がある[Fe(Ⅲ)sol]と腐植蛍光強度は、Fe(Ⅲ)と錯体を形成している自然中の有機配位子がディープウォーターカラム中の[D-Fe]に関与していることを最初に立証している。

COLLOQUIUM No. 601 (17:00-, 1 June 2017)

Mr. I. Nakagawa (Chair: Ms. Evans)



Interactive influence of iron and light limitation on phytoplankton at subsurface chlorophyll maxima in the eastern North Pacific. Limnol. Oceanogr., 53, 1303-1318 (2008).
B. M. Hopkinson1, K. A. Barbeau1 (1Scripps Institution of Oceanography, UC San Diego)

 クロロフィル亜表層極大における植物プランクトンの成長を制限又は共制限する要因として、中栄養〜貧栄養の東部北太平洋熱帯域と南部カリフォルニア湾で、鉄と光の役割が培養実験を用いて研究された。表層水が栄養塩制限下にある東部太平洋のいくつかのクロロフィル亜表層極大で、植物プランクトンの鉄-光共制限が見られた。鉄の添加は、この植物プランクトン群集のサイズ構成や種組成を変化させた。この植物プランクトン群集は比較的小さな植物プランクトンの多様な群集であったが、鉄添加によって大きな珪藻に支配された。最も強くて偏在する珪藻の鉄添加への反応は、光が強まった環境下で見られた。これは、渦イベントや強い内部波の発生のような光レベルが迅速に上がる時に、鉄利用能がクロロフィル亜表層極大の植物プランクトン群集に、最も強い影響を与えるポテンシャルを保持している可能性を示唆している。これらの結果は、鉄の供給がクロロフィル亜表層極大において植物プランクトン群集の構成に影響を与えることを示唆すると共に、有光層下部における栄養塩循環と炭素輸送にとって重要であることが示唆された。

COLLOQUIUM No. 600 (17:00-, 25 May 2017)

Ms. O.T.N. Bui (Chair: Ms. B. Li)



Impact of an unusually large warm‐core eddy on distributions of nutrients and phytoplankton in the southwestern Canada Basin during late summer/early fall 2010. Geophysical Research Letters, 38, L16602, doi:10.1029/2011GL047885 (2011).
S. Nishino1, M. Itoh1, Y. Kawaguchi1, T. Kikuchi1 and M. Aoyama2 (1 Research Institute for Global Change, JAMSTEC. 2MRI, Geochemical Research Department)

 Recent freshening of the Arctic Ocean due to melting of sea ice and enhanced Ekman pumping has deepened the nutricline over the Canada Basin and reduced nutrient concentrations in the euphotic zone. Cold‐core eddies frequently transport nutrient‐rich shelf water to the Canada Basin, but the eddies are much deeper than the euphotic zone. Because warm‐core eddies appear near the surface or at a depth range shallower than that of the cold‐core eddies, they may play a crucial role in determining nutrient distributions in the euphotic zone and hence may affect primary production. During late summer/early fall 2010, we conducted detailed surveys of a warm core eddy, which was unusually large (∼100 km in diameter). We suggest that this warm‐core eddy which contained high ammonium shelf water could supply ammonium to the euphotic zone in the southwestern Canada Basin and may sustain ∼30% higher biomass of picophytoplankton (< 2 mm) than that in the surrounding water in the basin. The role of warm‐core eddies in supplying nutrients to the euphotic zone and controlling phytoplankton distributions seems to be more important than previously because the recent deepening of the nutricline in the Canada Basin has decreased the nutrient supply to the euphotic zone.

COLLOQUIUM No. 599 (17:00-, 18 May 2017)

Ms. B. Li (Chair: Mr. Yamasaki)


Decadal acidification in the water masses of the Atlantic Ocean. PNAS, 112, 9950-9955 (2015)
A. F. Ríosa1, L. Resplandy2, M. I. García-Ibáñez1, N. M. Fajar1, A. Velo1, X. A. Padin1, R. Wanninkhof3, R. Steinfeldt4, G. Rosón5 and F. F. Pérez1 (1Marine Research Institute, IIM-CSIC, 2Scripps Institution of Oceanography, University of California, 3Atlantic Oceanographic and Meteorological Laboratory, NOAA, 4Oceanography Department, IUP, University of Bremen, 5Faculty of Marine Sciences, University of Vigo).

 増加しつづける大気中のCO2濃度の結果として、全球の海洋酸性化は主にCO2の海洋の取込みによって引き起こす。本論文は、大西洋50°S–36°Nにおける20年規模(1993–2013)の海洋pHの減少の観測を発表した。人為起源のCO2の取込みに関連しているpHの変化(∆pHCant)と生物活動や海洋循環によるpHの変化(∆pHNat)はそれぞれ異なる水塊に対して評価された。この観測結果を長期的な展望に入れるため、また、pH変化に寄与するメカニズムを説明するため、Institut Pierre Simon Laplace 気候モデルの出力は使われている。最も大きなpHの減少(∆pH)は中央水、モード水、中層水の中で観測された。最大∆pHはSouth Atlantic Central Watersの−0.042 ± 0.003であった。ΔpHのトレンドは深層水と底層水の中でゼロに近い。観測とモデルの結果はpHの変化が一般的に人為成分によって支配されていることを示している。これは中央水塊に対して、−0.0015 から−0.0020/yの速度で説明できる。人為起源と自然起源の成分は同じ桁の大きさでありながら、モード水と中層水の中で相互に補強し合う。モード水と中層水の中で観測された大きな負のΔpHNatの値は主にCO2含有量の変化によって駆動される。この負のΔpHNatはまた(i)南大西洋のSouthern Annular Modeのプラス相の間で形成海域の極域への変換; (ii)北大西洋水塊形成速度の増加と一致している。

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